エゴイスト
□視界…。
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…ありえない。
「上條さん…両目とも、“ものもらい”です…。珍しいですね。」
オレは…ちょっと目がゴロゴロするなぁ…ってくらいで…。でも、感染性の結膜炎とかだったら、大学に迷惑かけると思って、受診しに来てみたら……。
「…いやいやいや。切るのイヤですから。いーです。目つぶれても…。」
逃げるように診察室から出たオレを、看護師が追いかけて来た。
「上條さん、待ってください。切ると決まったわけではありませんからっ。」
…ドン。
「ぉわっ!?…っと、すみません。」
振り向きざまに誰かと、ぶつかってしまった。
「ヒロさん?」
「…野分っ。」
「あっ!草間先生。その人つかまえて下さい。」
…おい。待てっ!オレは犯罪者かっ!
「…ヒロさん。なにしたんですか?俺、看護師さんに捕獲要請されるなんて…ここに勤めて以来、初めてです。」
………何気に両肩掴んでんじゃねぇよ。
…逃げらんねーだろっ。
捕まえられても、尚且つ脱兎しようとするオレの心意気を、
「…ヒロさん。」
…と制止する野分の一言であえなく粉砕された。
診察室に連行されたオレの横には、野分が満面の笑みを浮かべている。
なんとか…こいつをどこかにやらないと…オレは……
「の…野分。仕事戻らなくていいのか?」
「はい。終わりましたから大丈夫です…。」
……ちっ!なんでこんな時ばっかりスッパリ終わってんだよ…。
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