エゴイスト
□何度でも…。
1ページ/8ページ
…ここは病院だから…あたりまえのように、いろいろな人が運ばれて来るけど…
………時には、絶対に来てほしくない人が運ばれて来ることがある……。
「救急隊から頭部に受傷した人を搬送すると連絡がありました。20代男性…。氏名…上條弘樹。意識なし。受け入れの準備をして下さい。」
たまたま、診察で来ていたERで耳を疑うような情報が入る。
…俺は、その名前を聞いて茫然とした。
……上條…弘樹?
「なぁ。野分、上條…って…お前んとこの同居人じゃ…って、おい…野分っ!」
津森先輩に話しかけられても……答えることもなく…
俺は走り出していた…。
ヒロさんでないことを願って……。
俺がついた時には…救急隊がその人を乗せたストレッチャーを降ろしていた。
冷たい汗が背中をつたい……
自分の重苦しい鼓動が身体を震わせる。
それは…額から出血の跡がある見慣れた横顔…
「ヒロさんっ!」
「野分っ、落ち着けっ」
「ヒロさんっ!ヒロさんっ!」
パチンっ!
「おい。落ち着けって、野分。…お前が騒いだところで、しょうがないだろ…。脳外科のドクターに任せとけ。……な。」
……津森先輩の平手打ちと宥(なだ)めるような言葉に、俺は、ハッとする。
「すみません。…俺…とり乱して…。」
「…ったく、お前もこんな風になるんだな……初めて見たぞ…。って、話聞けよ!」
先輩の話が、頭に半分も入ってこない。
「…あ、すみません。ヒロさんが心配で…」
津森は、小さくため息をつく。
「………まぁ、ざっと見た感じじゃ…今どうこういうもんじゃなさそうだ……。」
「でも…。」
「だーっ!わかった。なんかあったら知らせてやるから診察行ってこい」
「…はい。…お願いします。」
ヒロさんは、どんな時でも俺がしっかり仕事が出来るように…バックアップしてくれる。
…だから。
…俺は、それに恥じない仕事をする…。
…ヒロさん
……あとで…病室で会いましょうね。
.