エゴイストU
□七夕エゴイスト
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+七夕エゴイスト+
………ちょっと早かったかな。
弘樹(織姫)は、天の川の岸辺で時計に目をやる。
待ち合わせより1時間も早く着いてしまった弘樹は、野分(牽牛)との再会に心を踊らせていた。
「一年振りか。あいつ…元気かな。」
野分に会ったら、なんて言おう…。
「よぅ、久しぶり。」
…なんか軽いな。
「……会いたかった。」
…いかん。なんかオレばかり会いたかったみたいで癪(しゃく)に障る。
………でもな…たった1日しかないんだし…言いたい事をさっさと言わないと…あっという間に過ぎてしまう。
一夜限りの時間…。
これが過ぎれば、また1年会えなくなる。
「それを思えば、伝えたい事はきっちり伝えとかねぇと…。また来年になっちまう。」
………ここは、男らしくスパッと…
「野分…好きだ。」
……ああ…こんな歯の浮くような台詞…オレには無理だ、とても言えんっ…。
「ヒロさん…俺もです。」
突然、背後から聞こえた耳に馴染んだ声がする。
「の…野分っ!?。」
そこには、会いたくて会いたくて仕方がなかった野分の姿があった。
「いつからそこに…?」
「えっと…ヒロさんが時計を見ている時、鵲(カササギ)の橋を渡っていました。」
「橋?…どこに掛かったんだ?」
キョロキョロ辺りを見回すと、少し離れた岸辺にその橋はあった。
「いつの間に…///。」
弘樹は、顔を真っ赤にしながら眉を顰めた。
「ヒロさん…会いたかったです。」
「…オレも。」
「ヒロさん、好きです。」
「………オレもだ。」
抱きしめてくる野分の胸に顔を埋めて、それっきり何も言えない弘樹だった。
………今は…このままでいよう。
恋し焦がれる野分の胸の中で…。
(おわり)
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