エゴイストU
□+逆愛+
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「…ヒロさん。これどうします?」
「……どうする…って、……なぁ…。」
野分の胸元にトロリと流れるチョコを見ながら、2人は顔を見合わせる…。
バレンタインのこの日、
2人は揃って互いのチョコを買いに出かけた…。
毎度のことだがバレンタインチョコが並ぶエリアを睨み、一歩も動けない弘樹だった。
野分といえば、手作りするから…と、涼しい顔で板チョコを買ってきた。
どうして野分は、あのピンク色の世界に臆することなく入っていけるのか…と羨ましく思い、
恋人にチョコをあげたいと思う気持ちは人一倍のクセに、
あのエリアに分け入ることの出来ない自分を苦々しく思う弘樹だったが、
ふと目にとまったチョコフォンデュという文字にニンマリする。
「…野分。オレはバナナを買う。」
「ヒロさん、バナナはチョコじゃな……」
「うるせぇ。お前の買ったやつで、チョコフォンデュにする。…で、そいつを肴に酒を呑む。それでいいだろ。」
弘樹は、そう言ってカゴにバナナやイチゴを入れて、チョコに比較的合うウイスキーを選ぶ。
それなら…と、野分はマシュマロとカステラも付け足した。
「甘いのてんこ盛りだな…。」
「いいんです。今日は世界中の恋人達の甘い日なんですから。」
野分は幸せそうに笑った。
家について、店にあったレシピを見ながら準備を始めるが、これが意外と手間がかかった。
卵黄と砂糖を混ぜて、温めた牛乳を加え…溶かしたチョコと生クリームを氷水で泡立てながらふんわりさせる…。
テーブルに、串に刺した一口サイズの果物とマシュマロ、カステラを盛り付けた皿をおいて、ふんわりチョコも器に入れて隣に並べた。
「よし。じゃあ乾杯しよ。」
野分はウイスキーの水割りを…弘樹はハイボールで乾杯した。
一口ウイスキーを飲んだ弘樹は、
「…ぅわ…結構キツいな、…これ。」
野分に、飲んでみろとグラスを手渡す。
「ちょっと入れすぎたんですかね?」
「そうかもしれない。…まぁいいや。この後のは、もうちょっと薄くするし…。」
再び野分からグラスを受け取った弘樹は、グラスを掴んだまま…チョコフォンデュの中に串さしにしたバナナを突っ込んだ。
「ほら、野分食え。」
チョコをタップリ付けたバナナを差し出すと、
「…あ…なんか俺、すごく幸せな気分です。」
「な…なんでっ?」
「こういうのって恋人同士って感じが、しませんか?」
「…………///。」
顔を赤らめた弘樹は、皿の上にチョコをおくと
「自分で食えっ!」
と、そっぽをむいてグラスの中身を一気に流し込んだ。
「ヒロさん。ダメですよ、そんな風に飲んだら…悪酔いしちゃいますよ。」
手まめな野分は、空っぽのグラスに先ほどより少なめにウイスキーを入れて炭酸水を注ぎテーブルに置くと、弘樹がチョコをつけてくれたバナナを口へと運ぶ。
「…思ってたより、美味しいです。ヒロさんもどうぞ。」
チョコを付けたイチゴを口元へ寄せると、チラッと視線を向けた弘樹は口を開いて受け取り…モグモグと味をみる。
チョコの甘さと、イチゴの甘酸っぱさが絶妙なバランスを醸し出して…不味くはないかもしれないと、それを飲み込んだ。
その様子を静かに眺めていた野分は、
「……ヒロさん。」
「うん?」
「…好きです。」
「……なんだよ…いきなりっ///!?」
「今日は、特別な日だから…想いも特別なんです。」
そう言って、弘樹の唇についたチョコを指ですくうとペロリと舐めた。
「……そっか。バレンタインだもんな。」
野分の頬に触れた弘樹は
「…オレもな…お前に出会えて良かったと思ってる。……好きだよ野分…。」
こんなにも人を好きになるなんて思ってもみなかった。
それでも、飽くこともなく、好きという感情はますばかりで…
オレは、どんだけ野分を好きになれば気が済むのだろう。
そんなことを考えながら苦笑する弘樹を、包み込むように野分が抱きしめるから、ハッとしたように弘樹は我に返る。
「ははーっ!なんてなーっ///!」
照れ隠しに、思いっきり野分を突き飛ばした弘樹だったが、
思いのほか野分が
………すっ飛んだ。
「ぅわっ!ヒロさん!?」
「野分っ!」
反射的に野分のシャツを掴んだがボタンがはじけただけで結局倒れ込んでしまった。
その反動で弘樹も倒れ込みテーブルの上に手をついた拍子にチョコの器をひっくり返した。
「あーっ!」
一回転したチョコの器は見事に野分の胸におさまり
………今に至る。
「だ、大丈夫か!?」
「大丈夫ですけど…チョコだらけになっちゃいました。」
「…わりぃ。台無しにしちまった。」
器に残ったチョコを慎重に戻した弘樹は、チョコだらけの野分に情けない顔で謝った。
野分は胸元に残ったチョコを指先ですくうと
「はい、ヒロさんも手伝って下さい。もったいないから、このまま食べちゃいましょう。」
弘樹は目の前に差し出された野分の指を凝視すると…眉間にシワを寄せつつパクっと野分の指を啣えて舌で舐めとった。
「やっぱりチョコだけだと甘すぎますかね?」
「…………お前も舐めてみりゃわかる。」
弘樹は指を2本使って、たっぷりチョコをすくうと野分の唇に寄せた。
クスっと、小さな笑みを浮かべた野分は弘樹の目を見つめたまま、ゆっくりと口に含んだ。
ぬるんとした感覚に、ピクッと体を震わせた弘樹は、慌てて指を抜こうとすると野分に手首を掴まれてしまう。
くちゅくちゅと、弘樹の指を弄ぶように野分の舌は蠢く。
「……っ///。…おま…何…やっ…て…」
弘樹は、指から伝わる野分のいやらしい舌の動きに顔を赤らめる。
口から指を放した野分は
「ヒロさんの指…甘いです…。」
「…バカ…甘いのはチョコだ…。」
「いいえ、ヒロさんです……。」
野分は、唇を近づけると軽く口づけ…薄く開いた弘樹の唇に舌を這わせた後、耳元で低く囁く。
「…ヒロさん…キレイにして下さい。」
「…な…何を?」
「これです。」
野分は、チョコのついた胸元を指差した。
…な…舐めろってかっ!
「ふ…拭けばいいだろうっ!」
「ヒロさんが作ってくれたチョコクリームですよ、粗末になんか出来ません。ここじゃなければ、俺が全部舐めてました。」
いや…確かに、そこは届かないわな。
「だ…だからってな、……うっ…。」
野分が悲しそうな顔が目に入り、次の言葉を飲み込む弘樹だった。
「〜〜〜っ!わかったよっ!舐めりゃあいいんだろっ舐めりゃー///。」
野分の体温でゆっくりと流れ落ちていくチョコにそうように舐め上げると、野分が小さく喉を鳴らした。
「…あ…すみません。…なんだか……///」
「………ふーん…。」
弘樹は、意地悪な笑みを口元に浮かべ、チョコのたっぷりついた野分の突起を舌先で探るように突つくと、それは徐々に硬くなって来た。
「……感じてんの?」
「…だって…ヒロさん…ワザとそこばかり舐めるから…。」
「舐めろ…って言ったのは、野分だ。」
弘樹は、すっかり硬くなった突起を指で弾いた。
「……っ…ん…///。」
野分が鼻にかかった声をあげると、弘樹はしたり顔でほくそ笑んだ。
「…ヒロさん。」
甘えた声で弘樹の名を呼んだ野分にそっと唇を重ねた弘樹は、
「…オレが…全部舐めればいいんだろ…?」
そう言って、野分の首筋に舌を這わせる。
「ヒロさん…くすぐったいです。」
「野分が、いつもやってることだ。」
弘樹は、意地悪く笑い野分の突起を指で転がした。
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