エゴイストU

□+視界2+
1ページ/9ページ




ものもらいが出来て、両目を塞がれるという不幸な出来事も、

時には幸せ…なんて事もある。






「…ヒロさん。」

野分は、オレを抱きしめ背中を撫でる。

その手のひらは温かくて…優しくて…心地良い。

野分の鼓動を聞きながら、まどろむように…その胸に耳を押し当てる。


目が不自由な分、体のそこかしこが敏感になって不安ではあるが…コイツの胸の中だけは安心出来る。


髪を梳く指も…

「…ヒロさん。」


オレを呼ぶその声も…

研ぎ澄まされた五感が、ひとつ残らず拾い集めるから、体が勝手に熱くなっていく。

「……野分。」


弘樹が抱きしめられた胸から、そっと体を離し…黙ったまま手探りで胸から喉へと指を滑らせ、野分の頬を両手で包み込む。

「…ヒロさん…どうしたんですか?」

「……別に…。野分だな…って思って…。」

手のひらから、野分の輪郭を辿るようにして興味深げに触り続ける弘樹の好きにさせていた野分は嬉しそうに顔を綻ばせる。


「はい、俺ですよ。」

「…笑うな///。」

包帯で目許は隠れているが、恥ずかしさに眉を顰めているのが手にとるようにわかる。

それなのに手を離そうとしないから、野分はますます破顔一笑する。

「だって、嬉しいですもん。ヒロさんがいっぱい触ってくれるから…。」

「しょうがねぇだろ。こんな風になると、なんとなく珍しいっつうか…いつもと感覚が違う…つうか…。」

「いいですよ…いっぱい触って下さい。俺も好きに触らせて貰いますから…。」

野分は、そう言うと弘樹の手の上に自分の手を重ねて、

「ヒロさん…キスしますよ?」

と、優しく囁いた。



次へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ