エゴイストU

□装衣。
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「ヒロさん。学祭って、いつでしたっけ?」

ソファーで読書中の弘樹に、夕食の後片付けをしていた野分が声をかけると、

「…学祭?…ああ、週末だけど…なんで?」

本から野分に視線を移すと、楽しそうに皿を拭いている。


「俺、休みなんです。大学でのヒロさん…見に行ってもいいですか?」

「………あぁ、別に良いけど?。オレはサークルの学生達がやる喫茶店の手伝いだけだから…。来たら声かけろよ。案内してやる。」


「ありがとうございます。絶対行きますね。」


「おう。」









………そう。

あの時は、こんな事態に陥るなんて思ってもみなかった…。






…学祭当日。


「上條先生、まずいです。店…出せないかも。」

サークルの学生が、渋い顔を浮かべ弘樹の前に現れる。


「なに…?…なんかあったのか?」


まだ、開店前なのに…?


「女子がインフルエンザで…半数が餌食になりました。」


「……イ…インフルエンザ!?」



…聞けば…一昨日あたりから、怠さを訴える人がパラパラ出始めていたが、準備も佳境に入っており休むこともなく頑張ったらしい。


…よりによって、なんで学祭当日に発病すんだよっ。

でもまぁ、いつも以上に不特定多数が集中する今日じゃなくて良かったと言うべきか…?

好んで野分の仕事を増やす必要もないしな…。



「…で?どこが足りないんだ?」


裏方くらいなら手伝えるかもしれない。


「…いえ。あの…呼び物のメイドが足りないんで…。」


「メイドって?」

「ほら、うちメイド喫茶なんで…メインのメイドさんがいないんじゃ、ちょっと無理っぽいんですよね。」


説明する学生は、お手上げ状態とばかりに万歳する。


「他んとこから借りたらどうだ?」


「もうやってますよ。でも、メイド役の絶対人数が足りないんです。」


時計をチラチラみながら慌てている。…確かに開店時間も迫っている。


「…なんとかならないのか?」

「なんとかしたいんですが…衣装のサイズもあって誰でもいいってわけにもいかなくて…。…あっ…。」

何か思い浮かんだのか、学生は素っ頓狂な声を出し、弘樹を指差した。



「なに?」


「…いた。」


……嫌な予感がする。


「…なにが?」

弘樹は、学生の指差す先に自分がいる事に冷たいものを感じるのだった。



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