エゴイストU

□D黒の瞳
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「なっ!ちょっ…離せよ!…なんなんだ?!あんたらはっ!」


両脇をガッチリ抱えた男達は、弘樹に有無を言わせずゲストの控え室らしき一室へ放り込んだ。



がたいの良い2人は、一言も言葉を発する事はなく…代わりにさっきの男が敬語で話しかけてきた。


「失礼致しました。手荒に扱うつもりはなかったのですが…。」


物腰もやわらかく、静かな口調のこの男…よくよく見たら…日本人じゃないか…?。

瞳の色もグレーだし…。

どっちにしても、普通じゃねぇわな…この状況。



ザッと部屋の中を見回した弘樹は、差し出された椅子にどっかりと座り、

「…で?…あんたは…誰だよ?。」


「ああ…これは申し遅れました。シオンのマネージャーをしているライルと申します。」


「…紫音の?」


「はい。先程、上條様をお見かけし、こちらにお連れするように…と。」


「あのさ。悪いんだけど…オレ紫音に会うつもりないから…。」

「…シオンは…あなたを想っています。」


向かい合うようにして椅子に腰かけたライルは、哀しげに微笑んだ。


「…紫音は、ライルさんに…そう話したのか?」



「…はい。そう伺っています。…私がシオンに初めて会ったのはイタリアで…。彼は上條様に失恋したと言っていました…。」


………ふつうに名入りで公言してたのか、あのバカは。


「…あーそう。」




「……そして彼は、こうも言っていました。上條さんに釣り合う人間になる…。だからイタリアの地で頑張るんだと…。」


「…へえ。」


紫音のやつ…ちゃらんぽらんに見えるけど、こうと決めたら、結構頑張るなんだな…。

「仕事もたくさんこなして実績も積んで…今では押しも押されもしない地位を手に入れました。まあ…この業界の事ですから、かなり妬まれる存在ではありますが…。」

ライルは、そう言って肩をすくめた。



「…それで、オレにどうしろと?アイツには何度も言ってるが、オレには付き合ってるヤツがいるし、別れる気もない。変な同情をかけるより、キッパリとその感情を捨てて前に進む方がいいんじゃねぇの?」


努力するヤツをバカにするつもりはない…。

…だけど…それとこれとは話が違う。

「ふふっ。シオンの言った通り…真っ直ぐな方ですね。…でも私が言っても彼は納得してくれないでしょうね…。」

……なんだよ。オレに引導渡せってかっ!





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