エゴイストU

□+限定+
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「ヒロさん、ちょっと腕をあげて下さい。」


ほとんど間をおかず続けざまに抱かれ、身じろぎするのも億劫なオレの体を


お湯で湿らせたタオルを使い、慣れた手つきで拭いていく野分に、


「…お前、マメだよな。」


「くすっ。ベタベタしてイヤでしょ?。…はい、今度は脚貸して下さい。」



言われるがまま伸ばした脚を、笑いながら丁寧に拭き上げる。


野分に抱かれた後だから…別に嫌じゃないんだけどな…。


腰をひねり…体を反転させた格好になると、不意に野分の手が止まった。


「……?…なに?」

「…ヒロさん。…していいですか?」



この夜、もうすでに…2度体を重ねているというのに野分の欲情は止(とど)まる事を知らない…


「…やだよ。さっき散々やっただろ?。」


「すみません…でも…、」


「…しつこい。」


「ヒロさんにだけですよ…。」


オレの上から退こうとしない野分は、唇で撫でるように背中を這わせる…。

…おさまりかけた欲情をくすぐるように。





「…お前上手くなったよな…。」



「…それって、誰かと比べてるんですか?」


「そういう訳じゃねぇよ。」



…長い年月の中で、オレの身体を覚えてしまって…的確にそこを突いてくる……。


先に経験のあるオレの方に余裕があったのなんて…最初のうちだけで、


いつの間にか、野分に主導権を握られていた。




「…ヒロさんが好き。」

「お前さ、…んなことばっか言って…恥ずかしくねぇの?。」


枕に突っ伏したまま、背中に貼りつく野分に言うと…


「…くすくす。言わないと溢れちゃうんです。全部ヒロさんに受け取って欲しいです。」

そういって更に力を込めてくる。


…こうしてキツく抱きすくめられると、おさまりかけた心も身体も…また疼き出すのに…


「…あほ。身体が保たんわ。」

想いとは反対の素っ気ない言葉が口をつく。

「…まだ足りないです。」

「欲情丸出しだな。」


「それも…ヒロさんにだけです。」



脇腹を滑らせる大きな手は肝心な部分を避けるように下肢を撫でる。


身体の変化を気づかせないようにしているオレを…わざと…煽るように…。


「ずっと一緒にいたいのも……愛してると思うのも…ヒロさんだけ…。」


「…オレ限定…ってか?」


「そうです。ヒロさんだけ…。」



オレを仰向けにして、まっすぐに見下ろす野分と目が合う。




「………偶然だな。オレと同じだ。」


少し意地悪い笑みを浮かべたはずなのに、



「……嬉しい。」


…こぼれるような笑顔を向けるから…

余計な事を言ってしまったと後悔しつつ…




野分に手をのばし…黒髪を軽く梳きながら引き寄せ…

キスで誤魔化した。








………きっと…相手を想う気持ちとか、


…特別とか



…絶対オレの独占欲の方が勝(まさ)ってる。


…野分限定…で。






(おわり)

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