エゴイストU
□ささやかな主張
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「野分、これ…。」
「すみません。ありがとうございます。」
ヒロさんから手渡されたのは、2日分の着替えの入ったバッグ…。
相変わらず、着替えを取りにも帰ることが出来ない俺のために、ヒロさんがわざわざ持って来てくれたのだ。
「ヒロさん、久しぶりに会えて嬉しいです。」
……触りたいなぁ。
「そ、そうだな…///。い、いや、そうでもないだろ…。」
真っ赤になって…ヒロさんってば…スゴく可愛い。
…抱きしめたい。
「………ヒロさん…。」
野分が、弘樹の肩にそっと手を伸ばすと、
「……っ…!?…ぅわっ!?」
野分は、後ろから忍び寄って来た津森に首を締められる。
「の〜わ〜き〜ぃ〜。」
「ちょっ…っ先ぱ…っ…苦しっ……はっ入ってる、入ってますって!」
もう少しで、弘樹を抱きしめることが出来たのに…津森に首をキメられ気が遠くなる。
「あー上條さん、こんにちは〜。」
「………どうも…。」
弘樹は、恋人とのささやかなスキンシップさえも津森に邪魔され、強かに眉間にシワを寄せた。
「今日はどうしたんスかぁ?…なぁんて聞くまでもないかぁ。」
ニコニコと弘樹に笑みを向けた津森は、
「すみませんねぇ。なかなか帰してやれなくて〜。」
野分の肩に顔を乗せて白い歯を覗かせる。
「………別に…いつものことだ。」
弘樹は、すっ…っと視線を外した。
「ちょっと…先輩。やめて下さいって…。」
野分は、首に巻きついた腕を退けても、いつも以上に纏わりつく津森に困った顔をする。
「じゃあな。……仕事頑張れ。」
……ヒロさん?
「あの…ヒロさん、もう行っちゃうんですか?」
もう少し話したいのに
「ああ、お前に荷物も渡したし…。じゃあな。」
小さな笑みを浮かべたヒロさんは、ヒラヒラと手を振り帰ってしまった。
「…は…ぃ…。ありがとうございました。」
………ヒロさん、怒ってた?
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