ロマンチカU

□七夕ロマンチカ
1ページ/1ページ


+七夕ロマンチカ+


「おーい。ウサギさーんっ。久しぶりーっ!元気ーっ?」


天の川の岸辺に立つ美咲(織女)は、一年振りの再開に大きく手を振った。


対岸で、腕組みしたままタバコの煙をくゆらせる秋彦(牽牛)は不機嫌な顔で口を開いた。

「…遅い。この忌々しい天の川にお前との逢瀬を邪魔されてから…一年、ずっとここで待っていたんだぞ。」


「あ"っ!?牛飼いの仕事はどーしたっ!…つか、そのクマなに?」

「…これか?。これは鈴木さんといって…」

とぼけた顔で小脇に抱えたクマを指差すから、

「んなこと聞いてんじゃやねぇよ!仕事はどーしたっ!牛はっ?牛はどーしたっ!」

美咲は対岸から叫ぶ。


「…牛?そんなもの知ったことか。ほっといても勝手に草を食べていたぞ。そんなのと違って、この鈴木さんはな…俺がお前に会えない寂しい想いを紛らわせてくれていたんだ。」

と、しみじみ語る。

「働けよっ!バカウサギっ!オレは…あんたに会うため必死に機織りしたってのにっ!」


「金なら腐るほどあるだろう?。…なんだ、何か欲しいものでもあるのか?」


「……あ……あるよ。」

美咲が、そう言って俯くと…

ちょうど鵲(カササギ)が、どこからともなく飛んで来て天の川に橋をかけた。

秋彦が、その橋を渡り美咲のいる対岸へ辿り着くと、あろうことか鵲を追い飛ばして橋をなくしてしまった。

そんな暴挙に目を丸くする美咲に近づき、すっぽりと抱きしめた秋彦は

「…で?…何が欲しいんだ?」

そんな秋彦の問いに、

……ずっと…ウサギさんと一緒にいたいって事だよ…なんて、口が裂けても言わない美咲だった。



(おわり)




[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ