ロマンチカU
□七夕ロマンチカ
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+七夕ロマンチカ+
「おーい。ウサギさーんっ。久しぶりーっ!元気ーっ?」
天の川の岸辺に立つ美咲(織女)は、一年振りの再開に大きく手を振った。
対岸で、腕組みしたままタバコの煙をくゆらせる秋彦(牽牛)は不機嫌な顔で口を開いた。
「…遅い。この忌々しい天の川にお前との逢瀬を邪魔されてから…一年、ずっとここで待っていたんだぞ。」
「あ"っ!?牛飼いの仕事はどーしたっ!…つか、そのクマなに?」
「…これか?。これは鈴木さんといって…」
とぼけた顔で小脇に抱えたクマを指差すから、
「んなこと聞いてんじゃやねぇよ!仕事はどーしたっ!牛はっ?牛はどーしたっ!」
美咲は対岸から叫ぶ。
「…牛?そんなもの知ったことか。ほっといても勝手に草を食べていたぞ。そんなのと違って、この鈴木さんはな…俺がお前に会えない寂しい想いを紛らわせてくれていたんだ。」
と、しみじみ語る。
「働けよっ!バカウサギっ!オレは…あんたに会うため必死に機織りしたってのにっ!」
「金なら腐るほどあるだろう?。…なんだ、何か欲しいものでもあるのか?」
「……あ……あるよ。」
美咲が、そう言って俯くと…
ちょうど鵲(カササギ)が、どこからともなく飛んで来て天の川に橋をかけた。
秋彦が、その橋を渡り美咲のいる対岸へ辿り着くと、あろうことか鵲を追い飛ばして橋をなくしてしまった。
そんな暴挙に目を丸くする美咲に近づき、すっぽりと抱きしめた秋彦は
「…で?…何が欲しいんだ?」
そんな秋彦の問いに、
……ずっと…ウサギさんと一緒にいたいって事だよ…なんて、口が裂けても言わない美咲だった。
(おわり)
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