エゴイストV
□青天白日
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・・・・・・オレは
昨日・・・とんでもないものを見てしまった。
・・・野分が、ブライダルフェアの開催されているホテルに入っていったのだ。
少し照れたような優しい笑みをうかべて・・・。
それも・・・女と。
ガラス越しに見えたのは、受付の人とも親しげで初対面って感じじゃない顔だった。
帰ってきた野分は、ニヤニヤしっぱなしだし、おまけにカバンからはみ出たデカい封筒にはホテルのロゴと寿マークが入ってやがるし、
「なんか嬉しそうだな」って嫌味ったらしく言ったら、「え?あ、はい、すごく嬉しいことがありました。」とかサラッと言いやがった。
・・・うそだろ。
嬉しいことって、その流れから言ったら、“結婚”・・・それしかねーじゃんかよっ。
どういうことだ!?オレ達は付き合ってたんじゃないのか?
紆余曲折あったが、7年だぞ!
「・・・はぁぁぁ。」
深いため息をついた弘樹は、コーヒーカップを机に置いて、鬱々としながらパソコンの前に座る。
「なぁ、上條。この記事面白くね?」
昼休みに、パソコンでネットニュースをみていた宮城が画面を指さした。
「・・・何がですか?」
「いやさぁ、人間の脳みそって7年目に脱皮するんだってさー。」
「へー。そうなんですね。」
適当な相槌をうつと、
「そんでぇ、今やってることに脳が飽きて、新しいことをしようとするんだとさ。面白いデータだよな。」
宮城の言葉に弘樹は固まった。
・・・7年で脳みそが脱皮?
・・・飽きるだと?
そんなこと考えたこともなかった。
オレには、野分しかいない。野分の以外考えたこともない。
・・・でも、野分は・・・?
あいつは、違うのか?
オレに、飽きてるのか?
だからオレの知らない間に女作って、あんなとこ行くくらいにまで一気に発展しちまったのか?
・・・だ・・・脱皮したのか?
「か、上條?」
ずっしりと重みが増した頭を抱えていた弘樹は、徐に体を持ち上げた。
「・・・講義の時間なんで・・・行ってきます。」
野分は・・・幸せそうに笑ってた。
あんなに嬉しそうな顔・・・オレは知らない。
あの女には敵わない。
勝負にも・・・なりやしない。
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