エゴイストV
□攻防
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ニャンコの日~2020~
「あー。猫欲しいなぁ・・・。」
ほんの少しの休憩時間、中庭に入り込んで日向ぼっこしている猫を眺めながら津森が呟く。
「えっ?先輩が飼うんですか?」
同じく休憩時間の野分が隣に座り、コーヒーを手渡した。
「いやぁ、こーんな不規則な生活してるオレには無理かなー。」
そう言って津森はため息をついた。
「まぁ、確かにその通りですよね。」
野分もその意見に同意する。
「でもさぁ、飼えるんだったら、どんな猫がいいかなって思うわけよ。
ベッタベタに甘えん坊な猫も可愛いけどさ、可愛がりすぎてもダメ、
素っ気なさ過ぎてもダメっていう難しい猫もそそられるんだよなぁ。」
津森は、チラリと野分に目をやった。
「・・・俺は甘えてくれる方がいいんですけどね。」
「くすっ。お前の場合・・・そうだろうな。けど、オレは好きだなぁ、ツンデレで気位が高くて、
甘え下手なのに可愛く嫉妬する猫・・・。」
「先輩がそんなに猫好きとは知りませんでした。」
「なぁ、あそこにいる茶トラ、いいと思わない?
スラっとした尻尾、手足は引き締まって、細い体に無駄のない筋肉、おまけにかなりの美人だ。」
薄く笑みを浮かべた津森は、野分の肩に肘をのせた。
再びコーヒーの入った紙コップに口をつけた野分は、コクンと飲み下す
「俺も、ツンデレで嫉妬してくれる猫好きですよ。甘えて欲しいのは、俺の願望なんですけどね・・・。」
そう言って、津森の肘をさり気なく退けたが、それをものともせず
「あーあ、欲しいなぁ猫ー。」
「どうしても飼いたいなら、ペットショップにいっぱいいますよ?じゃ、俺時間なんで戻りますね。」
ニッコリと微笑んだ野分は、院内に戻っていった。
「・・・ベットショップには、いねぇんだよなぁ。」
そう言って、軽く伸びをした津森も、
「まぁ、一生懸命な犬も好きなんだけどね。」
クスクスと笑いながら、ゆっくりと歩き出すのだった。
(おわり)