エゴイストV
□交錯
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最初は何とも思っていなかった・・・。
なのにお前は、何もなくなってしまったオレの心にジワジワと入り込んでくる。
あいつ以外の誰かを好きになるなんて二度とないと思っていたのに。
どんなに邪険にしても人懐っこい笑顔を向けてきた野分。
連勤でフラフラしながら帰ってきたのに、逢いたかった。と抱きしめてくる野分。
愛していると、真っすぐに愛を伝えてくる野分が愛しくて、そっと抱きしめ返す。
ベッドの中で俺を抱きくるめたまま、スース―と寝息をたてる野分の体温を感じながら幸せであると心からそう思う。
お前に出逢えて
「・・・よかった。」
そう言ったら、野分の腕がピクリと動いた。
「えっ?じゃあ、もう一回してもいいですかっ?」
嬉しそうに見つめてくる野分に
「・・・そういうことじゃねぇよ。」
と、眉を顰めた。
しょんぼりしている野分を横目で眺めながら、弘樹は小さく笑った。
「でも・・・。」
今なら伝えられるかな。
お前を好きになって本当に
「よかった。」
「ヒロさんっっ///」
ギュウギュウと抱きしめてくる野分に
「野分・・・違う。それじゃない。」
弘樹は再び眉を顰めた。
(おわり)