変わり種

□◆祝賀◆
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ちょうどコーヒーをとりに部屋から出てきた秋彦は、騒がしい玄関先に顔を出したのだった。



「……弘樹?どうした」

「どうした…だと?秋彦てめぇっ!自分で本貸せとか言っといて、わざわざ届けてやったオレに、そのぞんざいな言い草はなんだっ!」


持って来た本を指し示し、いきなり怒鳴る弘樹だった。



…弘樹?


……秋彦?


弘樹って、上條先生の名前だよね…?

でもって、先生も「秋彦」って呼び捨てだし…。



ウサギさんと先生って、どういう関係…?


…………いやいや。今はそれどころじゃない。


このシチュエーションで、一番マズいのオレじゃね?


なんて言い訳すればいい?

草間さんと先生も知り合いみたいだし…


間借りしてる話…草間さん知ってるし…

なんだか、ウサギさんのことも知ってるみたいだし…


先生にも学生なのバレてるし…

……………なに気にオレって…八方塞がり?


「…ヒロさん。ちょくちょくこんな風に、宇佐見さんの家に来るんですか?」


…あれ?
草間さん……怒ってる?


「…ちょっ…ちょくちょくってわけじゃねぇよ。今日は、たまたま近くを通ったから、ついでに寄っただけだ…///。」


…あ…先生赤くなった。

「つーか、お前こそなんでここにいるんだよっ?」

「俺は、美咲君に頼まれて花の水揚げに来ただけですっ。」

…草間さん、そんなにムキにならなくても…。




秋彦は壁にもたれかかり…そんな様子を楽しそうに眺めながら、

「…まぁ…せっかく来たんだ。中に入ったら?」


……はい?

ウ…ウサギさん…今なんと?

「いえ。このまま失礼します。」

野分は弘樹が持っていた本を抜き取ると秋彦に渡した。


「おいっ!野分、なんのつもりだっ。」


「ヒロさん、本は宇佐見さんに渡しましたし、もう用は済んだはずです。それに、俺と約束忘れたわけじゃないですよね?。」



…あ…草間さんの約束って、上條先生だったんだ。


「お前に指図される覚えはねぇぞっ!」


「ヒロさんっ!」


…なんか、雲行きがあやしい…。

「…あの…。草間さん…先生…。」


あたふたする美咲を横目に…タバコをくゆらせ笑みを浮かべる秋彦は、

「…立ち話もなんだし…寄っていけよ。」


………え?

…ウサギさん、なに言っちゃってんの?


「ああ。そうさせてもらうよ。そこの“美咲君”とやらの話も聞きたいしな。」

…上條先生まで…。




ほとんど人を寄せ付けない秋彦が、その辺に普通にいそうな一介の学生を家に出入りさせているなんて…

いったいコイツは何者なんだ?と言わんばかりに美咲を凝視する。



……見てる!

上條先生…オレを見てるーっ。



……やべ。緊張し過ぎて吐き気がして来た。



「…美咲、どうした?顔色悪いぞ?」



…てめぇのせいだろっ!バカウサギっ!




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