変わり種
□◆祝賀◆
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美咲は中に入ると、まず秋彦がいないか確認し…
「この家の主は、居るには居るんですが…仕事中で部屋に籠もってて。」
そう説明しながら、野分を招き入れた。
「すみません。……これなんですけど…。」
多量に置かれた花束を指さすと、さすがに野分も驚いた表情を見せた。
「……スゴいですね。」
「…でしょ?」
美咲は、そう言って肩を落とす。
「…まぁ…とにかく始めましょう。…美咲君、悪いんだけど花瓶を準備して…花束は包装紙から外してくれますか。」
「はい。」
美咲は、野分に言われた通り水を入れた花瓶を運んでくる…。
メッセージカードのついたものは、カードを外しポケットにねじ込み…包装を解いて野分に手渡す…。
野分は、それを次々選別しながら水揚げしていく。
時折、見よう見真似で手伝う美咲にアドバイスし、テキパキ作業を進めていった。
ただ、量が半端でなく花瓶に入りきれず、予想通り余ってしまった。
「…美咲君、花瓶まだありますか?」
「もう、今ので最後です。…あのご迷惑でなければ残っているやつ貰ってくれませんか?」
「えっ?これをですか?そんな…いただけませんよ…。」
「いや…是非ともお願いします。もったいないし…。」
野分は、しばし黙り込むと…
「……さすがに、この量は無理なので、病院…とかに寄付しちゃったらどうでしょう。」
「それ、名案ですね。そうしましょう。」
美咲は、ひとつの花束も無駄にすることなく…かつ、喜んでもらえそうな所に引き取ってもらえるなら…と素直に喜んだ。
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