エゴイストU
□E黒の瞳
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家に着いてすぐに、ヨレヨレのYシャツは野分によってサクサク脱がされ
「自分でするからっ!」と抵抗する弘樹の体を丹念に観察する。
最後には自分のつけたキスマークの位置すら確認する野分に、ウンザリといった表情する弘樹だったが、仕方なく付き合っていた。
「……もういいだろ。」
「はい。唇のキズと…強く抑えつけれていた手首が少し赤くなっているくらいで…他は大丈夫みたいです。唇は、すぐに良くなると思いますし…手首の赤みも消えると思います。」
野分の見立てに弘樹は改めて手首を見返した。
「…ホントだ。こんな風になってたなんて気づかなかった…。」
「そういうのは、あとから出てくるんですよ。たぶん、もう少し赤みは強く浮き出ると思いますから…びっくりしないで下さい。じきに消えますから。」
「…わかった。」
…あのまま…野分が来なかったら…オレはどうなっていたんだろう。
「…ヒロさん。」
「…ん?…なに?」
弘樹が顔を上げれば、そこには野分の心配そうな視線があった。
「な…なんだよ。…顔が近過ぎだぞ。」
「はい。今…ヒロさんにキスしようと思っているので…近くてあたりまえです…。」
ちゅっ…と啄むような口づけの後、優しく包み込むように唇を重ねてくる…そんなキスを弘樹は黙って受け入れる。
「……ヒロさん?」
「…やっぱ…全然違うな…。」
野分の口づけは…あったかくて…気持ち良くて…優しい。
「何がです?」
「なんでもねぇよ。」
弘樹は、ふいっと照れながら顔を背ける。
「なんですか?気になります。」
「………………………。………お前のがいい。」
「…えっ?」
「あんな…無理やりやられたのなんか…キスじゃねぇ。」
弘樹は、野分に言われた事を多少なりとも気にしていたようだ。
「すみません。…気にしてたんですね。」
「…まぁ…ちょっとはな。これでも身持ちは堅い方なんだからな。それでも不可抗力ってことあるだろ。」
……身持ちは堅いと言っても…隙だらけなんですけど…。
…と、言いたいところを例のごとく飲み込んだ野分だった。
「…なんだよ。その物言いたげな顔は…。」
「…いえ別に何も。」
野分は溜め息混じりに小さく笑った。
「…あー。そういえばお前、結構力あんのな。あんなに転がるとは思わなかった。体抑えつけられて頭に来てたから…ちょっとスカッとした。」
「…いや…あれは…工事現場でセメント袋を放り投げる要領で…あんなに転がるなんて俺もビックリでした。」
「…とにかく、サンキュ。」
「…なんだか、ヒロさんがそんな事言うと…ヒロさんじゃないみたいです。」
「…おい。どういう意味だっ。」
「くすくす。そういう意味ですよ。」
「…わけわかんねぇやつだな…。」
「…ヒロさん。キスの続きしてもいいですか?」
「…っ///。……つうか…なんか無性に野分とやりたい気分だ。」
普段絶対そんな事を言わない弘樹の発した言葉に…一瞬面食らって固まった野分の頭を引き寄せると、真っ赤になりながらも唇を寄せた弘樹に、
…嬉しそうに口づける野分だった。
(おわり)