エゴイストU
□E黒の瞳
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「紫音さんは…あなたの気持ちには気づいているのでしょうか?」
「…さぁ…どうでしょうね。今は上條さんの事で頭がいっぱいでしょうし…。気長に待ちますよ。」
口元に手をあて優雅に笑うその仕草に…野分は口を開いた。
「…俺は…そんな余裕ないですね。…今…この時ですら、紫音さんに嫉妬する…。」
「わかりますよ。私も同じですから…。」
そんなライルの言葉に、困ったように野分が笑みを返すと、突然ドアが開き弘樹が姿を現した。
「野分…。ま、待たせたな。」
「…はい…ヒロさん。いっぱい待ってました。」
野分は弘樹を抱き寄せると…ぎゅうっ…と体を包んだ。
「…お話…終わりですか。」
「…ああ…。」
弘樹は、頬を染めながらも大人しく野分の中におさまっている。
「あーあ。もーやめてくんないかな〜。傷心の僕に気遣いってもんはないの?」
野分は、頭をポリポリとかく紫音に視線を移すと
「ありません。」
…と、柔らかい笑顔の中に返事を包(くる)めた。
「ライルさんーっ!ね〜酷いと思わない?僕、マジで泣いちゃうよー。」
「私の胸で良ければ貸しますよ?…ただし、今から行うファンとの握手会を機嫌良く乗りきってくれればですが…。」
商売気質丸出しの微笑みを向けたライルは、
「ちぇーっ!」っと膨れる紫音の頬を優しく撫でた。
「…っ///。な、なに?」
後ずさる紫音に、くすくす笑いながら肩を抱いたライルは、
「さぁ、仕事、仕事。シオン…上條さんにお別れを…。」
ライルは紫音を弘樹に向けた。
野分の腕の中でもがいていた弘樹は、やっとそこから逃れ自分の足で立った。
「紫音。」
弘樹に呼ばれた紫音は、
「…バイバイ。上條さん…。」
紫音は小さく笑い手を振った。
「おうっ!お前も仕事頑張れよ。」
「…うん。」
ライルは、頷く紫音の肩をポンポンと軽くたたき促すと仕事へ戻って行った。
紫音の後ろ姿を見送る弘樹を訝しげに野分は見つめた。
「ヒロさん?…どうしたんですか。」
「あいつ…前から生意気だとは思っていたが…。」
そう言って顔を顰(しか)める
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