エゴイストU

□素材+オマケ+
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せめて、雑誌の表紙だけでも見ることが出来ればと思うと、名残惜しい。


「上條先生。どうしたんですか?」

「…えっ?」


学生に声をかけられ振り向くと、数人がニヤニヤしながら、オレを見ていた。

「上條先生のタイプって、あの中にいるんですか?」


……なんでそーなるっ!


「…いや。なんか楽しそうだな…と思っただけだ。なんの本を見るとあんなに盛り上がるんだろな?」

誰か教えてくれーっ。



「…本…ですか?」

学生が屯している方に視線を向けた。



…そう…あいつらが見てるヤツだ。


「まぁ、レポートの資料に使うようなものでは、なさそうだがな…。」


興味等、まったくなさげな態度を示しながらも、喉から手が出そうなのを必死で堪える事で精一杯だった。



「おーい。何見てんの〜?」


ナイスだっ。学生!

声をかけられた方は、

「これ?」


彼女が雑誌を閉じ持ち上げた瞬間、オレの心のシャッターは、音速を超える勢いできり続けた。


よしっ!黄色いタイトルの表紙っ!


「あ…それ…発売されてすぐに売り切れたヤツだろ?」


………今、なんつった?

売り切れた…だと?


「…先生?」

…いけね。ショックで魂が抜けてた。


「ああ。なに?」


学生は、オレの顔をじっと見つめ、ニヤリと笑うと、

「ねぇ。その雑誌、先生見たいって。」

おいーっ!


「ちょっ…。誰もそんな事言ってないだろっ。」

「俺が見たいんですよ。先生、悪いんだけどダシになって下さい。あとでまわしますから。」


小さな声で耳うちされ、見たいと言えないオレと、見逃したファッション雑誌を手に入れたい学生との妥協案が成立した。


「……ったく。しょうがないな。」

オレは、眉間にシワを寄せ迷惑そうに言いながらも、心の中でガッツポーズを握っていたのだった。




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