エゴイストU
□素材+オマケ+
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………野分が見せると言ってから数日…なんの音沙汰もなく…、あいつはオレが忘れるのを待っているかのようだ。
ところが…思いがけなく野分の雑誌の情報がもたらされたのだった。
キャンパスを横切って研究室に戻る途中、女子学生が賑やかに屯(たむろ)する場所を通り過ぎようとしたオレの耳に、その情報が入ってきた。
「この人の本名なんていうのかな…?ふつうさ、素人のモデルさんって、プロフィールにフルネームじゃなくても名前くらい出すよね?。」
「N.Kってイニシャルだよね?」
………N.K。
野分と同じだ。
………ふ。野分…観念しろ…。てめぇが見せたくなくても、オレの周りには、そういうのに非常に明るい奴らがごまんといるんだ。
一人ほくそ笑んだオレだったが…如何せん立場的にも、性格的にも彼女達の輪に入る事が…出来ない。
立ち止まるには、あまりにも不自然で、歩く速度をやや緩め…女々しいと思いつつも、藁にもすがる思いで聞き耳を立てる。
「このページにしては珍しいよね。インタビュー記事載せてるもん。」
「特別扱い?…へぇ。ちょっと…じっくり見せてよ。………結構…いいかも。」
「そうなんだよねぇ。でも恋人いるって書いてある…。」
「あ。ホントだ…。素人のうちにお近づきになりたかったのにーっ。」
「だよね。…で…ほらここ…。」
「きゃあ。すごーい。」
…あの…いったい何が…書いてあるんですか…?
ものすごーく気になるんだけどっ!
しかし、その先がオレの耳に届く事はなかった。
…そう…オレは精一杯ゆっくり歩いたのに、彼女達から離れてしまったから…。
………聞かなきゃ良かった。よけい気になっちまったじゃねぇかっ。
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