エゴイストU
□素材。
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来た道を戻り、スーパーで少しだけ買い物をして…ぶらぶらと無造作に下げた袋を片手にマンションに帰り着いた。
とりあえず買ったものを冷蔵庫に入れたあと、不安と苛立ちで重苦しい体をソファに沈めた。
…今夜も…きっと野分は
……シャワーを浴びて帰ってくるだろう。
……濡れた髪のままで。
「…ばか野分。」
ソファーで寝返りし…ふて寝を決め込んだ。
しばらくして、野分が帰宅する。
やっぱり髪が濡れてる…はっきり言って昨日より…あからさまだ。
「ヒロさん、ただいまです。…まだ、起きてたんですね…。」
「………お前に聞きたいことがある。」
イヤミのつもりで準備したタオルを渡したが、ふつうに髪を拭き始めた野分は、
「…はい?なんですか」
「お前さ…バイト増やしたのか?」
「……///。……え?」
……おい。………なんでそんなに驚く?
「ど…どうしてそんな事聞くんです?」
……なんで…そんなに動揺してるんだ?
「…あ…夕方お前を見かけた…から…。」
…野分。
…だから…なんでそんなにマズイって顔すんだっ!
「……野分。オレに何か隠してないか?」
「…いえ…あの…。…はい。でも、隠してるわけじゃなくて…。」
………なんつう歯切れの悪さだ…。
こんな野分は見たことないぞ…。
「お前が…どんなバイトしようが勝手だがな…。………オレにも言えないバイトなのか?」
「……………。」
「野分っ!一緒に住み始める時決めたじゃねぇか!何でも話すって!」
「短期の…バイトなんです。明日で終わりです。」
「だからっ!なんのバイトだっ!」
野分は、しばし逡巡した後…重い口を開いた。
「………モデルです。」
「はぁ!?…モ…モデル?」
………なんつった?
…モデル?
「…嘘つけ。」
「う…嘘じゃないです。雑誌のモデルなんです。」
「…なんで?…いったいなんのために…。お前…病院と今やってるバイトで手いっぱいだろう?」
「それはっ!………。それは…言えません。」
「なんじゃそりゃ?」
「…でもっ!バイトはホントです。心配かけるようなものでもありません。」
……オレに言えない事が…まだ…あるのか。
「…わかった。もう聞かねえよ。…好きにしろ」
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