エゴイストU
□+桜の下で+
2ページ/2ページ
「なっ!…そんなの…人に見られたら困る…///。」
「くすっ。…嫌…じゃなくて…困る…ですか。」
「………ぅ…。」
「…大丈夫ですよ。さっきこっちに歩いて来る時、確認しました。あっちが明るすぎて、ヒロさんほとんど見えませんでしたし…。」
「…だからって…な…」
……ちゅっ。
「…おいっ……///!」
「…すみません。」
野分は悪びれた様子もなく、逆に嬉しそうだ。
「…ったく…///。」
弘樹は小さく眉間にしわをためているのに、頬を染めながら俯いた。
……包み込むように握りしめる野分の手が大きくて………とても暖かい。
2人は手をつないだまま桜をしばし見上げていた…。
.
「ヒロさん、手をつないで帰りましょうか。」
「バカ。なに言ってんだ。んなこと出来るわけねぇだろ!」
「いいじゃないですか。恥ずかしいなら、酔ったふりして下さい。そしたら腕を組んでも、肩を抱いても目立ちませんから…。」
野分はニコニコと答えた。
「…誰がするかっ!」
「…そうですよね。…あ…ヒロさん、ちょっと動かないで下さい。」
「…なんだよ?」
野分は、弘樹の髪についた一片の花びらをつまんだ。
「桜の花びらです。」
そう言って花びらに口づけた。
「………っ///。野分っ!…か…帰るぞっ!」
「ヒロさん。待って下さい。」
「今度は、なんだっ!」
「もう一度…キスさせて下さい。」
「なんでっ!?」
「…来年も…その次も、ずっと…この桜の下でヒロさんと一緒に桜を見られるように、おまじないみたいなものですよ。」
……毎年…一緒に桜を見る…………か…。
野分は、そっと弘樹の髪に指を絡めて引き寄せると、静かに唇を重ねた。
「…ヒロさん?。」
……意外にキスを大人しく受け入れた弘樹に、野分は驚いた。
「…ほら///。帰るぞっ」
「……俺…酔ったかもしれません。」
野分は、弘樹の肩に額をのせた。
「そんなに飲んでねぇだろ?」
「…いえ…嬉しくて…」
「なにが?」
「……ずっと一緒にいてもらえる約束もらったみたいで…。」
「…別に…ふつうだろ?花見…なんてさ。」
「…くす。…ふつう…なんですかね。」
「…くどいぞ…///。」
「はい。すみません。…ヒロさん…もう少しだけ…こうしてていいですか?」
…野分は、込み上げてくる愛しさと“ふつう”と言ってくれる嬉しさに、弘樹の肩に額をおいたまま…そっと抱きしめた。
〔おわり〕