エゴイスト

□好きの進化系
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「…恋人?…かもな。」

「………え"っ?」

学生達がその一言で固まった…。

「………なんてな…。」

……言えたらいいのに。

「…先生は…どんなタイプの人が…好きなんですか……?」


「別に…ないな。こいつの事好きだ…って思ったやつが…タイプなんじゃねぇの?」

自分で言っといてなんだが……血流が一気に早くなったような気がする。


……やべ…マジで酔いがまわってきたみたいだ。

ハッキリしない頭を、コトンと壁にもたれて、ひと息ついた…


目を閉じると、ぐるぐると頭の中で酒がまわってるように感じる。



ピロロ…

ポケットの中をおぼつかない手で、携帯を探す。

「もしもし。」

『あ、俺です。店の前に着きました。』

「…ホントに来たんだな…。」

『はい。ヒロさん…会いたいです…。』


………お前の声は

……オレの酔いを冷ますどころか

…………助長する。

「…おい。……酔わせてどうすんだよ……。」

『えっ?歩けないほど飲んでるんですか?……店の中まで行きますか?』

「……いや…いい…。這ってでも出るっ!」

…小声で、携帯で話すオレを見つめる

…複数の眼差しに囲まれて…

……オレは、目のやり場がなくて………。

………悪酔いしそうだ。

「今…行く。」

『…はい。………待ってます。』




携帯を閉じると、学生達が口々に、今の誰?彼女ですか?と、しつこく聞いてきた………。

「違うっ!知り合いだっ!知り合いっ。しつこいんだよっ。お前らはっ」

「え〜。もうちょっと飲みましょうよ。」

「ワリいけど用事が出来た…。」


こいつらに、関わってたら、いつ帰れるか、わからない…。

…久しぶりに野分と過ごす時間を、これ以上無駄にしたくない。

「じゃあな。お前らはゆっくりしてけ。」


しつこくする学生達を置き去りにして、無理やり店を出た。


………野分が、白い息を漂わせ、店の前で待っている姿を見て、ツキンと胸が痛む。

「悪い。寒かっただろ?ごめんな。」

「いえ。勝手に迎えに来たんですから…。」

…野分は小さく笑った。

「店に入れば良かったのに……。」

「……いえ。電話の向こうから聞こえる声で、なんとなく雰囲気が伝わりましたから。」

………まったく、野分は気がきき過ぎる。

絶対にオレを困らせることをしない……。


「……帰りましょう。」

オレの肩に手をまわしたので、

「ばか…人が見てる!」

野分は、くすくすと笑い

「大丈夫ですよ。どう見ても、足下のおぼつかない酔っぱらいを送っていく人にしか見えませんから。」






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