エゴイスト

□予約
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「…オレ、寝るわ…。」

「…あの、ヒロさん。」

立ち上がろうとした矢先、野分は口を開いた。



………別れようってか?

…まだ、聞きたくない。




「……寝る。」

「…ヒロさん…待って下さい。あの……話があるんです。」



………やっぱり。


「聞きたくない。」

その場を離れようとしたオレの腕をつかんだ野分の体から……甘い香水の香りがする。

「話があるんです。」


………あの女の…匂い。



「……離せ。」

「えっ?」

………むせかえる。

…不快な香り……。


「あの女の香りがする手で、触んなっ!」

オレは、野分の手を振りほどいた。

……久しぶりにオレに触ってきた手が…

…あの女の移り香が…………嫌だ。



「ちょっ……待って下さい。」


「うるせえっ!てめぇの好きにしたらいいだろっ!オレは、止めねぇしっ。」


「待って下さい。なに言ってるんですか!」


「だからっ!野分の好きにしろ!オレは関係ないっ!」


野分の気持ちが冷めてしまったのなら…この恋は終わりだ…。




オレの気持ちだって…いつかは冷めるはずだ。


…冷静になれるはずだ。

心のキズだって…きっと


「ヒロさん、話を聞いて下さい。」

野分は、痛いほど強くオレの肩をつかんだ。


「…いてぇよ。…離せ」


………最終通告するつもりか……。




……それもいいかもしれない。

…いっそ、その方が潔い

…もしかしたら、オレも立ち直るのが早いかも?



……んなわけ…ない…か。



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