エゴイストU
□宝物。
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部屋の片付けをしていたら、天袋から野分の手紙が出てきた。
…あいつが…アメリカに留学していた時、ポストに入れずに書き溜めた…オレ宛ての手紙…。
「…ったく。出せばいいのに……。」
そうすれば、オレだって…不安で悲しい気持ちのまま1年も待たずに済んだものを…。
手紙は…読みやすく丁寧な文字で…オレに対しての想いがあふれていた。
会いたい…会いたい…。
…何度も
……何度も…
書き綴られた手紙…。
…オレだって…
…会いたかったさ…。
……なのに……散々な目にあわせやがって…。
……やべっ。
……なんか…腹立ってきた…。
弘樹は、忌々しい過去を思い出し苦虫を潰した。
「ただいまです。ヒロさん帰ってますか?」
何も知らず帰ってきた野分は、こぼれるような笑顔を見せる。
…玄関にクツあんだろ。
分かりきったこと言ってんじゃねーっ。
「…………おかえり。」
弘樹は、眉間にシワを寄せ不機嫌極まりない。
「あれ?どうしたんです?」
野分は、オレの顔を見て首をかしげる。
「…どうもしねーよっ。……だが……一発殴らせろ……。」
「……やです。」
勢いよく振り上げた拳(こぶし)は…
ニコニコ笑う野分の手によって、あっさり阻止された……。
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