エゴイストU
□予備。
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………オレは…見つけてしまった。
冷凍庫の奥に何重にも包まれた…アレを…。
「…野分のやつ…食わねーなら……捨てればいいのに。」
…………それは…オレが作ったバレンタインのチョコ…。
嬉しそうな顔してたから……てっきり全部食べてくれたと思ってた。
「捨てるとバレるとでも思ったか…?」
沸々(ふつふつ)と沸き上がる怒りを抑えつつ…
アレを……見てしまった後の行動について考えていた。
……捨てるべきか?
いやいや、捨てればオレが見つけてしまったことがバレてしまう。
…かと言って、そのままにしておけば、冷凍庫を開けるたびに…きっと目を向けてしまう。
……そして、そのたびにオレは不快に思うだろう…。
「…捨てるか。」
…しかし、その行為は…オレの想いを自分で捨ててしまうことになる…。
チョコを作るにあたり、オレは…それなりに想いを込めた。
一気に食べられなくても、時々食べてくれたら、その姿を見る度に…きっと、オレは嬉しかったはずだ。
…それを自分の手で捨てるなんて…
「はぁ〜。」
「…ヒロさん?盛大な溜め息ですね。どうしたんです。」
「…っ野分。帰って来たのか。」
オレは、例のアレに気づかないふりをして、自然を装い冷凍庫の扉を閉めた。
「…はい。ただいまです…。」
小さく笑う野分は、買い物袋をさげていた。
「…なに買ってきたんだ?夕飯の当番オレだし、もう出来てるぞ?」
「あ…これは、ホワイトデーのお返しに、子供達にクッキーでも作ろうかと…」
「…ふーん。」
オレのチョコを食い残して…か…。あーそうかよ…。
弘樹は、不機嫌な顔をしてソファーにどっかりと座った。
野分は、キッチンに買って来た材料を袋ごと置くと、そのままオレの前に来て膝をついた。
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