春雨の朝は早い。
海賊でも朝から会議があるのだ。
今回は幹部の人だけが会議なのだが…。
バァン
『団長ぉぉお!あんた何時まで寝てんですかぁぁあ!もう私怒りますよ?団長と歳近いから殴れまヘブッ』
布団から手が素早く伸びて、私の顔を鷲掴みにした。
「そうなの?…じゃあ相手してあげる。」
手に力が入って顔の骨がミシミシといっている。
や、ヤバいぃぃ!
『ま、まっへ!わはひより…はいひに…。』
団長はニコッと笑ってから、めんどくさいなーと着替え出した。
「眠くなるんだよね。元老のすることなすこと面白くないんだ。そうだ。いっそサクッと殺しちゃえば…」
『やめてぇぇ!阿伏兎さん今仕事に追われて死にかけてんですよ!』
これが会議の朝の団長。
任務がある日は驚く程早く起きてらっしゃるのだが…。
団長はベッドの上に胡座をかいて、髪の毛を三つ編みに束ねはじめた。
準備が出来たら、扉を開けて団長が部屋から出るのを待ち、会議室まで送るのが私の役目になりつつある。
団長を送った後、自室で傘の手入れをして、お腹が空いてきたので食堂に行けば既に他の師団もいたので、美味しそうなもんを食べている奴におねだりするのも私の日課。
今日は鯛の顔した奴の海老フライに決定。
『それ美味しいですか?』
「あ?あ〜美味しいけど?」
『ふ〜ん。くれ。』
「全然おねだりじゃねぇじゃん!てかお前丼8杯頼んでただろうが!」
『鯛みたいな顔して海の生物食ってんじゃねぇよ。何の魚だ。鮭か!?鮎か!?』
「てめぇ今鯛つってただろうが!」
食堂での喧嘩も珍しく無く、周りは皆呆れた顔をして見てくる。
「親子丼30杯ぐらいで良いや。早めにネ。」
いつもの柔和な笑みを浮かべて、席に座り私の倍も食べる団長は会議を終えたみたいだ。30杯でぐらいって言葉がつくのだから流石団長。
『終わったんですね〜。お疲れ様です。』
「まぁね。ほら、早く座りなよ。見下ろされるのはあんまり好きじゃないんだ。」
団長は私の腕を引っ張り、隣に座らせた。
『や、でもこれテーブルの上が丼だらけで凄いことなりますよ。38杯の器が並ぶんですから。』
「良いんだよ。上司の隣に部下が座るのは当たり前だろ?」
『どこの国の当たり前ですか!』
だがそう言われれば素直に嬉しいものであって、何せ、あの憧れていた第7師団に入れてその団長に言われたのだから嬉しい他に何があろうか。
「少なくともこの師団では当たり前だよ。」
『じゃあ阿伏兎さんも隣に座るんですね。団長が阿伏兎さんと談笑しながらの食事。微笑ましいです。』
運ばれてきた親子丼を食べていた団長はお箸を止めて、輝かんばかりの笑顔でこっちを見てきた。
「人間は何で考えるか知ってる?」
『は?』
団長は私の手の上に自分の手を重ねた。
それはね…と言ったその瞬間。
バキッバキバキッ
「こういうことになりたくないからだ。」
私の左手は見事に砕かれた。
『ぎゃあああ!何してくれてんですか!何か手ぇ凄い形になってますよ!』
「言葉は選べってことさ。」
団長はごちそうさまと言って、食堂を出て行った。
「明日、任務だからネ。早めに治しておくんだよ。」
『………………』
あぁ…夜兎で良かった。