総北

□インハイが終わったら
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「手嶋くん、好き」

「え?」

唐突にクラスで割と仲のいい女子に告白された俺は、戸惑った。

正直、嬉しい。

好きか嫌いか言えば、好きだ。

付き合いたいとも思う。

でも嬉しいんだが応えられない。

部のことだけで手一杯な状態だ。

「あ、ごめん、困るよね?
でも、付き合ってとか言いに来たんじゃないの」

俺が黙っていたから困っていると思われたんだろう
篠宮はそんな事を言った。

「は?」

「あ、困ってるんじゃなくて戸惑ってる?」

俺の反応に察した篠宮はそう問いかけてきたので、素直に頷いた。

「だよね」

あははと笑った篠宮

「私、手嶋くんがどれだけ部活にかけているか知ってるつもりだよ?
あれだけ話を聞いてるんだから」

だからねと続ける篠宮

「邪魔はしたくないと思ってる。

自転車以外のことで、他のこと考えてる時間なんて無いと思うし。

だから付き合って欲しいとは思ってないの」

今はね、
と微笑んだ篠宮の言いたいことが少しわかってきた俺は口を開いた。

「正直、嬉しいよ。
俺なんかを好きになってくれて」

「それって、手嶋くんも私を好きだって期待していいの?」

「好きだよ、篠宮」

「ありがとう、嬉しい」

篠宮は本当に嬉しそうに笑ってから

「インハイ終わるまで待ってるから。
だから、それまで自転車だけ見て余所見しないでね?」

そう少し切なそうな顔でお願いしてくる篠宮。

それって、篠宮だけを想ってろってことだよな?

そんな健気なこと言われたら..俺

「ごめん、待てねぇや」

「え?」

「俺と、付き合って」

「で、でも....」

「全然、構ってやれないと思う。

我儘だってわかってんだけどな...

篠宮は俺のだって言える関係になりたい」

俺の言葉に篠宮は我慢できなかったのか、涙を零した

「いいの?
手嶋くんの彼女になっても」

「篠宮こそいいのか?
デートとか出来ないし、インハイ終わるまで今と変わんないと思うぜ?」

「いいよ。

だってそういう一生懸命に努力してる手嶋くんが好きだから...

だから、私がそんな手嶋くんを一番近くで見ていてもいい?」

「...かなわねぇな、篠宮には」

そう言えばキョトンとする篠宮

「好きだ」

そう言って遠慮がちに唇を寄せた俺

予想外だったのか頬を真っ赤に染める篠宮は文句なしに可愛いかった


こんな俺にはもったいない彼女だ
インハイが終わったら放っておいた分の埋め合わせを精一杯しますか




(インハイの後に思いを馳せる)
end
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