総北

□カラオケ
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「篠宮さん、カラオケ行かない?」

そう手嶋くんに声をかけられたのは昼休みだった。

「今日?」

「そう。もしかして予定あった?」

「ううん、無いよ。大丈夫」

「じゃ、放課後、約束な」

そんな会話を交わした。

部活の休みがあまりなく、交友関係の広い手嶋くんのことだから、てっきり皆んなで行くのかと思っていたのに。

皆んなと言わずとも、青八木くんは一緒なのかなって思ってたのに。

二人っきり。

カラオケボックスに二人っきりのこの状況。

こんな心の準備も出来てない私にはハードルが高過ぎます。

それに、友達と行く時ってあんまり気にならなかったけど、狭い、狭いよね?

私のすぐ隣に手嶋くんがいるなんて。

「篠宮さん?
どうかした?」

「あ、ううん。
なんでも無いの!」

「もしかして...皆んなでだと思ってた?」

「.....うん、実は」

「あー....俺と二人ってもしかして、いやだったりする?」

「えっ。そ、そんなことないよ!」

ただ心の準備がっ

と口走ってハッとした。

「じゃ、緊張してる、とか?」

「う、うん。
男の子と二人って初めてだから」

そう言ったら手嶋くんはがっくりうな垂れた。

「そっちか...」

その反応は期待してもいいのだろうか。

正直、男の子と二人が初めてだからというよりも、手嶋くんと二人だから緊張しているのだけど。

「よし、なんか歌おう。
篠宮さん、リクエストとかある?」

俺結構上手いんだぜと笑う手嶋くん。
知ってるよ、好きな人のことだもん。

「じゃあ、」

と私は好きな男性歌手の曲を伝えた。

「お、それ俺も好き」

そう言っただけあって、手嶋くんはとても上手だった。

歌ってる横顔がかっこよくて、つい見惚れるてしまった。

「じゃ、次は篠宮さんね」

とデンモクを渡される。

私は好きな女性ボーカリストの曲を入れると歌い出した。

「篠宮さんもかなり上手いんだな」

驚いたと手嶋くん。

「手嶋くんには及ばないよ」

といえば

「そんなこと無いだろ」

って笑いかけてくれる。

緊張は溶けたけど、なんだか夢見心地だったから、一瞬夢かと思った。

今、キス、した?

でも、手嶋くんを見れば真剣で、それでいて熱っぽい目で私を見つめていたから
これは夢じゃ無いって思った。

ソファについていた手に手嶋くんの手が重なった。

「手嶋、くん.....」

「篠宮さん、俺と付き合ってください」

1秒が長く感じる。

あれ、私、好きな人に告白された?
多分、すごい戸惑った顔をしていたんだと思う

「困らせるつもりは無かったんだけどさ」

言いたくなったんだ、と手嶋くん。

「うん、」

私は一つ頷いて、深呼吸をしてから

「私も手嶋くんが好きです」

そう想いを告げた。






(カラオケボックスに好きな人と二人ってドキドキするよね、っていうのを思い出して書いてみた)

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