総北

□間違いなく女神
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「詩織ちゃん、おはようさん」

「あ、鳴子くん。おはよう」

詩織が振り返ればそこには鳴子章吉がいた。

髪の毛が赤くて、底抜けに明るい。

「今日も早いね、練習してから来たの?」

「あたりまえやんけ。

スカシには負けられんからな」

カッカッカと笑う鳴子に詩織は微笑んだ。

「鳴子くん、お疲れ様」

「おおきに。

これからもこの難波のスピードマン鳴子章吉の応援をよろしく頼んます」

そう仰々しく言った鳴子に詩織は、ふふっと笑った。

「ところで詩織ちゃん」

「なぁに?」

「日曜にレースがあるんやけど..」

「うん、ロードのレース?」

「そや。

詩織ちゃん応援に来てくれたりせーへんかなって」

「誘ってくれるってことは、近くでやるの?」

詩織が聞けば鳴子が近くの地名を告げた。

「詩織ちゃんが応援に来てくれたら、ワイものごっつ頑張れるんやけど」

「ふふっ、そんなに?

私、勝利の女神でもなんでもないよ?」

「そなことない!

詩織ちゃんはワイの勝利の女神や!」

「そ、そうかな」

「せや、なんてったってワイは詩織ちゃんに惚れてるからな!」

カッカッカと笑う鳴子に詩織は驚いて顔を赤くした。

「えっ⁉」

そんな詩織を見て鳴子が不思議そうに尋ねた。

「ん?どないしたん?詩織ちゃん」

「え...だって今....」

「今?」

鳴子が自分の言った事を反芻して

「ワ、ワイ...今.....。

なんちゅーことや!

勢いで言うてしもた!」

もっとド派手に、告白するつもりやったのに!

と、ショックを受けていた。

「あ、あの鳴子くん」

詩織の声にハッとして

「詩織ちゃん今のは、その...

聞かなかったことに....ならへんよなぁ」

「えっと...聞かなかったことには出来ないかな」

だって嬉しかったから

そう詩織が言えば

「そ、それって、両想い言うことやんな⁉

ホンマに?」

そう嬉しそうに言う鳴子に、詩織は少し恥ずかしそうに頷いた。

「めっちゃ嬉しいわ!

もうこれは次のレース優勝間違いなしや!」

そう言った鳴子に、ぎゅっと抱きしめられた詩織は顔を赤くして

「な、鳴子くん、大げさだよ」

そう照れたように言った。

「詩織ちゃん、可愛すぎるで」

と鳴子は言って

「詩織ちゃん、レース来てな」

そう照れを隠すようにニカッと笑ったのだった。






end
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