運命の恋

□5微妙な距離とクリスマス
3ページ/9ページ

「リズは....いや、こんなこと教師が聞くものじゃないな」

言いかけて止めるルーピンにリズはどうしたのかと問いかけた。

「答えられることなら答えますけど...」

「先週の満月の翌日だけど、誰かとデートだったのかい?」

「え?私がですか?」

「随分嬉しそうに大広間を出て行くのが見えてね」

「あ、それはフィールドワークに禁じられた森に行っただけですよ?」

「本当に?誰かとデートだったんじゃないのかい?」

「違いますよ。

デートする相手もいないんですよ?」

リズは若干嘘をつかなければならなくて申し訳なく思った。

"デートじゃないけどシリウスに会いに行ってたなんて言えないし..."

「だけどリズは好きな人がいるって言っていたと思ったけど」

「え、はい。

だけど告白もしてないから相手は私の気持ちなんて知らないだろうし。

私の事なんて恋愛対象じゃないんだと思います。

エリーなんかは可能性あるんじゃないかって言うけど...」

リズはなんで当の本人を前にこんな話をしているのだろうと頬を染めた。

「相手は誰だかわからないけど、リズならどんな相手でも可能性はあるんじゃないかな?」

「どうして、ですか?」

「リズは頭もいいし優しい。

それに美人だと思うからね」

ルーピンはなんでもないことのようにいうが、リズは顔が熱くなるのを感じた。

"どうしよう...すごく嬉しい"

「あの、ありがとうございます」

リズは小さな声でお礼を言った。

「あのっ!お茶を飲みにきたときとか満月の日とかだけでいいんです。

あの、えっと...先生のこと、な、名前で呼んでもいいですかっ⁉」

リズは言い切ってから怖くて俯いた。

"どうしよう、変に思われた?

突き放されたらどうしよう..."

リズには数秒が数分にも感じられた。

「私は構わないよ。

名前で呼んでくれたら嬉しい」

ルーピンの答えにリズは顔をバッと上げてそのままの勢いで名前を呼んだ。

「リーマス....」

名前を呼ばれた当の本人は、嬉しそうに微笑むのだった。

「リ、リーマス。

えっと...ええっと...そうだ!

私、脱狼薬の研究を始めるの」

リズはつい名前を呼んでしまってから慌てて話題を探した。

「魔法薬学の教室を放課後かしてもらえることになって。

実験の許可ももらってて」

リズは矢継ぎ早に話す

「えっと、だから...何が一番改善されたら嬉しいか知りたくて」

「そうだね。

まずは味が苦いのが飲みにくくてね。

甘党の私には特に」

「うんうん、それから何かありますか?」

「あ...残念」

「え?」

「せっかくリズが普通に話しているなと思ったのに戻ってしまったからね」

「???」

「敬語じゃなくてかまわないよ。

二人っきりの時はね」

リズは顔を赤くしながら頷いた。

「それから改善点だけど、高価な材料が多いことと、副作用で具合が悪くなるのは少し困るね。」

「材料は....根本から全て作り直さないとちょっと難しいかも...

副作用はトリカブトのせいだし...

もっと違う毒性のない材料で構築できるといいんだけど...うーん」

リズは考え込んだ。

「リーマス。

あの、今度少し血をもらってもいい?」

「かまわないよ。

何に使うんだい?」

「人狼の血を毒と見立てて、解毒できる作用のある植物とかを探したいの。

そうしたら、変身を抑える薬だってできるかもしれないもの」

リズは研究者の目になっていた。

「私でよければ協力するよ。

私のためにもなることだからね」

「ありがとう、リーマス!」

ルーピンの言葉にリズは喜んで、思わずリーマスに抱きついた。

「大胆だね」

そうルーピンが笑えばリズは顔を真っ赤にして

「ご、ごめんなさい」

と慌てて離れた。

そんなリズの様子にルーピンはクスクスと笑った。





.
次へ
前へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ