一途な恋を黒犬と
□13学期末と裁判と
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四人とも翌日の昼には退院したが、城にはほとんど人がいなかった。
みんなはホグズミードだろう。
マリアは三人を自室に呼んだ。
お茶を飲みながら、ハリー達は昨晩の冒険の話をしたり、シリウスとバックビークがどうしているかと思案を巡らしていた。
マリアがふと窓の外を見ると、フクロウが窓を開けて欲しそうにマリアを見つめていた。
「お疲れ様。誰から?」
そうマリアが手紙を開けばリーマスからで、教職を辞任したとそれだけ書かれていた。
マリアはハリー達にリーマスが教職を辞めることになったから会いに行くと告げた。
自室を出ようとすれば、ハリーも行くとマリアの後に続いた。
「ロン、ハーマイオニー、自由にしてていいから」
そうマリアは残る二人に告げて、ハリーと共に大急ぎでリーマスの部屋へと向かった。
「リーマス、入るわね」
言い終わらないうちにマリアはリーマスの部屋へと踏み入った。
「マリアにハリー」
リーマスはくるとわかっていたというように苦笑いで二人を出迎えた。
「リーマス、何故辞めるの?
昨日、狼の姿で自由に動き回ったせい?」
「それもあるけどね.....
その、セブルスが今日の朝食の席で私が狼人間だとついうっかり漏らしてしまったんだ」
その答えにマリアは顔をしかめた。
「きっとシリウスに復讐できなかった腹いせね」
マリアは肩をすくめた。
「だけど先生、そんなことでお辞めになるなんて!」
ハリーが言った。
「んー、ハリー、狼人間に教えを受けることを望まない保護者もいるんだ。
現に昨夜のようなことが再びおきて誰かを噛んでしまうこともあるかもしれない。
そんな危険な者を教員としておくのを良しとしないだろう。」
「だけど!
先生は今までで最高の闇の魔術に対する防衛術の先生です!
行かないでください」
リーマスはハリーの言葉にただ首を横に振った。
マリアもこればかりは仕方ないとハリーの肩にそっと手を置いた。
ハリーはまだリーマスを説得しようと模索しているようだった。
するとリーマスが言った。
「校長先生が今朝話してくれた。
ハリー、君は随分多くの命を救ったそうだね。
私に誇れる事があるとすれば、それは君が多くのことを学んでくれたことだ。
なぁマリア?素晴らしかったんだろう?ハリーのパトローナスは」
「そうね。とても助かったわ。
優秀な生徒に先生だったわけよね」
マリアは微笑んだ。
「ルーピン先生、どうしてそれを?」
「ディメンターを追い払う方法はそれしかない」
ハリーは昨夜の出来事をリーマスに話した。
ハリーが話し終えると、リーマスは微笑んだ。
「そうか、守護霊の姿が牡鹿だったのか。
確かに君のお父さんはいつも牡鹿に変身していた。
だから私たちはプロングズと呼んでいたんだ。」
リーマスはスーツケースに最後の荷物を放り込み、ハリーに向き直った。
「さあ、昨夜叫びの屋敷からこれを持ってきた」
そう言ってリーマスはハリーに透明マントを差し出した。
「それと....マリアが君から没収してきたこれも返そう。
私はもう先生ではないからね」
そうマリアにウィンクして、忍びの地図もハリーに渡した。
「別に私、リーマスが先生でも止めないけど?
だって、それって形見でもあるんだから。
それに、ジェームズだったら
自分の息子ががこの城を抜け出す秘密の通路を一つも知らずに過ごしたなんてなったら、
大いに失望したわよ?きっと」
そう言ってマリアは微笑んだ。
そこにドアをノックする音が響いた。
ダンブルドアだった。
マリアは軽くお辞儀をした。
「リーマス、門のところに馬車が来ておる」
「校長、ありがとうございます」
リーマスはお礼を言い、スーツケースを手に取った。
「君の先生になれて嬉しかったよ、ハリー。
マリアにも久しぶりに会えたし、楽しかった」
「こっちこそ学生の頃に戻ったみたいで楽しかったわ。
リーマス、またね!」
マリアはリーマスを抱きしめた。
「校長、門までお見送りいただかなくて大丈夫です。
マリアたちも」
「それでは、さらばじゃ、リーマス」
リーマスはダンブルドアと握手をして出て行った。
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