巻島

□シャッターを押して
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初めて見たレースは、正直すごかった。

山岳リザルトラインで待てばいいと金城さんに教えられてバイクで先回りして待っていたのだ。

「来たぞ!」

「箱学と総北だ!」

そんな歓声と共に姿を現した巻島先輩ともう一人。

東堂、というらしい。

「いつもより速い」

そう口にしながら懸命にシャッターを押した。

「巻島せんぱい、一番輝いてる...」

巻島せんぱいを撮りながら、一緒に映り込む箱学の東堂さんも写真に収めていく。

なんだろう...
2人だからこそ、巻島せんぱいが今までで一番輝いて見えるみたい。

そう思ったら撮らずにはいられなかった。二人を。

そしてリザルトライン、決着の瞬間を逃すもんかと必死にシャッターを切った

「こんな気持ちで撮ったこと、ない...」

少し呆然としてから、
通り過ぎた二人の後ろ姿をカメラに収めた。

ちょうどハイタッチを交わしたところだった。

なんでこんなに、何かが足りないと思うのだろう。

清々しいような、熱いような、温かいような、寂しいような、満たされてるようで満たされていない、この気持ちは何?

胸を押さえてぎゅっと目を閉じれば
さっきの、ゴールを必死で目指す二人の姿が焼き付いて離れなかった。




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