巻島
□シャッターを押して
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そしてインハイ当日、私は自転車競技部のメンバーと一緒にバスに乗り込んだ。
何故か私の席は巻島せんぱいの隣で、巻島せんぱいに対して抱いている気持ちがどういうものなのかわかっていない私は、そわそわと落ち着かない気分だった。
当の巻島せんぱいはグラビア雑誌を読んだり眠ったりと私のことなんて気にしてないみたいだった。
ふと、自転車に乗っていない巻島せんぱいも撮ってみたいという衝動に駆られてカメラを取り出す。
眠ってしまっている巻島せんぱいに焦点を合わせてシャッターを切った。
「わぁ.......」
予想以上にいい写真だった。
自転車に乗ったキラキラしたものとは違う、無防備なその姿はなんていうか、透明で綺麗だった。
なんだかドキドキする。
写真、撮るんじゃなかったかな..
と、落ち着かなかったさっきまでに合わせて早まる鼓動に、雪乃は少しの後悔をしたのだった。
“だけど、自転車に乗ってなくてもいい写真が撮れるなら....もしかして他の人も”
と雪乃は試しに誰かを撮ってみようと思うのだった。
このインハイ中になら他の人も撮れるかもしれないと、雪乃は期待に胸を膨らませた。
いい加減に治したかったのだ。
人を撮れない自分を。
人より他人に興味を持てない自分を。
変えたかった。
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