巻島

□シャッターを押して
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巻島せんぱいを撮るようになってから、日々はあっという間に過ぎていた。

「こんなに早く毎日が過ぎたこと、ないな」

楽しい時間は早く過ぎるっていうけど、最近充実してるってことなのかもしれない。

自転車部は過酷な練習が続いていて、もうすぐインターハイが近づいていた。

運動部では無かった私には、その少しピリついた空気もなんだか新鮮で、
ただ写真を撮っているだけの私もいつのまにかインターハイに心躍らせていたみたいだった。

巻島せんぱいとはあれからほんの少し話すようになって、彼の輝いているわけがなんとなくわかったような気がしている。

“自分“というものを持っていて、それがブレないのだ。

あのダンシングもあの髪も、あの私服のセンスも、誰に何を言われても貫き通すその姿勢が、多分、巻島せんぱいを輝かせている。

「少し、似てるのかも。
私が写真を撮る時のそれに」

そう呟いて空を見上げれば、今日も太陽が私たちを照りつけている。

「今日も暑いな」

次の瞬間、すっかり聴き慣れてしまった自転車の音を耳が拾って、
私は今日も輝いてるであろう巻島せんぱいを収めるためにカメラを構えた。
通り過ぎる一瞬を撮り終えて

「それにしても、楽しそう。
坂を登るの」

そう呟きながら、部室に戻って休憩しようと、裏門坂を登る。

そうして巻島せんぱいの事を考えた。

あんなに口下手なのに、結構世話好きで、周りをよく見てる。

だからなのかな、小野田くんなんかは“巻島さんカッコいいです!”って目をキラキラさせてて、慕ってます感がすごくて。

だけどたまに見せるあの憂えた表情、多分誰も気にしてないけど、
あれを見たら、何かを一人で背負い込んじゃってるような気がして、正直心配になる。

「何を抱えてるのかな...
って.....私、なんでこんなに巻島せんぱいのことばっかり考えているの...」

そりゃ、興味を持った人ではあるし、毎日撮り続けてれば自然と巻島せんぱいに視線はいく、けど。

「なんかこれ........巻島せんぱいを好きみたいじゃ...?」

頭を振ってその考えを追い出そうとして

「他に撮りたいと思える人がいたら、確かめられるのに」

そう口をついて出た言葉に自分でギョッとした。

「確かめてどうするの.....」





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