巻島

□シャッターを押して
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それから毎日、雪乃は練習を見に行っては巻島を撮り続けていた。

「雪乃さん、雪乃さん!」

今日も来たなと雪乃は苦笑いで振り返った。

「なに?鳴子くん」

「ワイも撮ってください!」

「だから、だーめ」

「一枚だけでも!」

「やだよー」

「そこをなんとか!」

「もー、今日はしつこいね?」

雪乃は毎日撮ってくれとしつこい鳴子にため息をついた。

「ワイ目立つの好きなんです!」

「うん、知ってるよ」

「じゃあ撮ってください!」

「もう...。撮りたくてもできないの」

そう観念して言えば

「なんですかそれ?シャッター押すだけじゃないんすか?」

と鳴子。

「うーん、まぁオート機能だからそうなんだけど....
撮りたいと思ったものしか、納得のいくものが撮れないんだよね」

「雪乃さんが納得いってなくても構わないんで、お願いします!」

そう頭を下げる鳴子には悪いが

「それなら私じゃなくてもいいじゃん?」

そう少し冷たく言えば

「あ.....すんません。
ワイが間違ってました」

と素直な謝罪。

「いいよ。
ただの私のワガママだから」

そう返してから、雪乃は結構長く話していたらしいことに気がついた。

巻島が帰ってきてしまっていたのだ。

「鳴子くんのせいで撮り逃したよ⁉」

そう言って怒る雪乃から

「す、すんませんー」

と逃げだす鳴子。

それを遠くから巻島が見ていたなんて、雪乃は思ってもいなかった。




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