巻島

□シャッターを押して
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「おい、巻島いるか?」

「おぉ、なんっショ?田所っち」

「コイツがお前を探してた」

そう言って田所が示したやつを見れば知らない女子。

下級生だよな。誰だ?

巻島は怪訝な顔をした。

「私、2年の篠宮雪乃です」

ぺこりとお辞儀する雪乃に

「あぁ.....巻島だ。巻島裕介」

で、なんの用っショ⁉という巻島の心中を田所が代弁した

「で、なんで巻島を探してたんだ?」

「昨日、裏門坂で見かけたんです。
自転車競技部の練習だと思うんですけど..」

「あー、そうっショ。多分」

「それで走るところを見た時に、撮りたいって思ったんですコレで」

そう言って雪乃はカメラを掲げた。

「で?」

「あ、はい。

私、今まで人を撮りたいと思ったことなくて。
風景や動植物ばっかり。

でも、昨日、巻島せんぱいを撮りたいと思ったから。
巻島せんぱいに興味が湧きました!」

それで探していましたと言えば
田所も巻島もぽかんとして雪乃を見つめていた。

立ち直った田所は盛大にガハハと笑って雪乃の背中をバシバシと叩いた。

「篠宮、面白いじゃねぇか。
撮れ撮れ、いくらでも」

そんな事を言い出したのだった。

「ちょ、ちょっと待つっショ!田所っち!」

「なんだ。恥ずかしいのか?」

「それもあるけどヨ、いや、そうじゃなくて!」

「別にいいじゃねぇか。
ファンだよファン、お前の走りのファン。
そう思えばいいじゃねぇか」

そう言って田所は今度は巻島の背中を叩いた。

「オレなんか撮ったってしょうがねぇっショ?
撮るならほらあれだ、今泉とかイケメンを撮ればいいっショ!?」

「え?巻島先輩、イケメンじゃないですか?」

「ショォっ⁉」

「ほれ、決まりだな。
主将の金城には言っといてやるよ。
巻島専属カメラマンだってな!」

「ありがとうございます」

「ただし、練習の邪魔はすんなよ」

「もちろんです!」

雪乃と田所は笑い合った。

オイオイ、コイツら...オレの意見は無視⁉無視なのか⁉
と、巻島だけが一人深いため息をついたのだった。





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