巻島
□シャッターを押して
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「今日はいい天気♪」
雪乃は放課後、人のあまりいない裏門坂で森林浴をしていた。
「寝ちゃおうかな」
少し歩道をそれて木陰にごろりと仰向けに寝転がった。
そして大事そうに雪乃は何かを抱えている。
「空も青い!でも何か違うな〜」
そう言いながら抱えていたものを構えた。
一眼レフのカメラだ。
雪乃は写真部かと問えばそういうわけでもなく、カメラに詳しいかといえばそれもそうでもない。
シャッタースピードや絞りの合わせ方など感覚でやっているし基本オート撮影だ。
ただカメラが好きで好きで仕方ないのだった。
「何か綺麗なものが撮りたいな」
そう呟いた雪乃は微睡み始めており、ゆっくりとその瞼を閉じた。
どれくらい経ったのだろう。
何やら騒がしさに雪乃の意識は覚醒していった。
自転車の音...?
え?何、今の叫び声⁉
パチリと目を開けて起き上がれば、何やら自転車に乗った二人組が見えた。
けれど叫び声を上げていたのは彼らではなさそう。
「自転車部?」
小さく呟いて様子を見ていれば
「オレの走りを見て走りたくなったらついてこい」
なんて声が聞こえてきてそれから不思議な走り方で一気に坂を登った緑。
「あ....」
一瞬で釘付けになって、無意識にカメラを向けてシャッターを押していた。
「綺麗...」
陽の光が反射して緑色の髪がキラキラと輝いていた。
きっと普通に歩いている彼を最初に見てもなんとも思わなかっただろう。
自転車に乗る時の彼はきっと一番輝いているのだと雪乃は思った。
「なんていう人だろう」
学年が違うのは紛れも無い。
緑の髪の同級生は見たことないから。
「先輩....?」
うん、そうかも。
指導してるっぽかったし。
そう雪乃は結論付けて彼に会いに行こうと思ったのだった。
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