巻島

□恋に落ちる瞬間
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昼休みに入ってすぐ、隣の席の巻島くんのなんだか悲壮なショに私は顔を向けた。

鞄の中を見て頭を抱えている。

まぁ、私も頭を抱えているんだけど。

今私の鞄にはお弁当が2つ。

一つは彼氏の分だったのだ。

元、だけれど。

私は今朝、彼氏に振られた。

あっちがお弁当を作ってきてと言い始めたのに、そういうのが重いから無理、だって。

そう言われて振られた。

はぁ、なによ、なんで振られなくちゃいけないの...

ご飯も無駄にしたくないし、どうしようかなって朝から思っていたのだけど。

これはもしかして?
と巻島くんの様子をもう一度確認すれば、やっぱりそうなんだろう。

「巻島くん?
お財布忘れちゃったの?」

「あ、あぁ....」

「田所くんならいっぱいパン持ってるんじゃ...?」

仲の良さそうな自転車部を思い出して言うと

「今日はダメなんだ。
部活のメンツは昼、都合付かなくて会えないんショ」

そう困った顔の巻島くんに分かりきった質問を投げかける。

「困ってる?」

「そりゃ、腹も減るし、な」

「ね、私のお弁当を食べて、私を助けてくれないかなぁ?」

「ハ?」

「ちょっと訳ありでお弁当一つ無駄になりそうなの」

と2つの弁当箱を見せればなんとなく察したのか

「じゃ、場所変えようぜ」

と教室を出て行く巻島くん
私はお財布とお弁当2つを持って巻島くんを追いかけた。


たどり着いたのは中庭で、空いていたベンチに腰掛けてからお弁当を差し出した。

「はい、これ」

「本当にいいのか?」

「うん、巻島くんが嫌じゃなければ是非」

「ありがたくいただくっショ」

そう言った巻島くんは、本当に助かったとでも言いたげにお弁当を受け取ってくれた。

二人でお弁当食べ始めるとすぐ隣から

「美味い....」

と少し驚いた声。

「え、そんなに驚くの?
私、そんなに料理不得意そう?」

「まぁ、意外だった」

「え、酷いなぁ」

そう言って笑ってから、私は試しに言ってみた。

「ね、お弁当のお返しに、愚痴に付き合ってくれたりしない?」
と。





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