巻島

□あなたの声
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裕介くんとお付き合いを始めてもう随分経つ。

今では声以外にも沢山の好きなところが数え切れないくらい。

裕介くんのロードに乗ってる姿を見たときは、あの長い髪を振りながら坂を登っていく姿に惚れ直した。

それで思ったの。

私は声がきっかけだったけど、裕介くんは私の何が好きになったのだろうって。

裕介くんのお家で、お家デートしている時にそれを聞いてみたら、

「一目惚れ、ショ」

と一言。

見た目かぁ。

「でも、私そんなに美人でもないよ?」

と今では慣れた、裕介くんの趣味であるグラビアを指差していえば

「雪乃はカワイイ、っショ」

ってやっぱり当たり前のように言ってくれる裕介くんに、私はキュンとする。

「ところで雪乃は、オレのどこが好きなんだ?
オレなんか、キモいっショ?」

なんて言ってくる

「裕介くんはきもくないです!
カッコいいです!」

そう抗議すれば、
わ、わかったから教えるっショ
と裕介くん。

「うんとね、声、かな」

「声?オレの?」

と不思議そう。

「そうだよ。裕介くんの声、すごく好き。
落ち着くけどドキドキする、かっこいい声」

「クハっ、かっこいい声ってなんっショ」

「だ、だってそう思うんだもん。
そ、それにね、女は耳で恋をするって言うんだって」

「ん?なんか似たような話、聞いた気がすんな。
アー、男は視覚で恋をする、らしいショ」

金城が言っていたと裕介くん。

「まるきり当てはまっちゃってるね、私たち」

「クハっ、そうだな」

そう言ってひとしきり笑った後、裕介くんが意地悪そうな顔をして

「だからか」

と呟いた。

ん?と首を傾げていたら、急に裕介くんが近づいてきて。

「雪乃」

と耳元で囁いてきた。

「んゃ....」

「耳が弱いと思ってたが、声にも弱かったんだな、雪乃は」

と笑う裕介くん。

からかわれたのだと気づいたけど、真っ赤な顔はどうしようもなくて。

仕返しとばかりにキスしてあげれば、案の定照れる裕介くん。

「おあいこね」

って笑った私だったけど、この後、結局裕介くんに負けることになるのを私はまだ知らなかった。





fin


(最近は森久保さんの声が一番好きだなぁと思って書き始めました)
(男は視覚で女は耳で恋をするが言いたかっただけ)
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