巻島

□あなたの声
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公園でのひと時を終えて、家に着くも夢見心地でずっとふわふわしている。

夢じゃ、ないよね?

少し不安になって頬を抓れば痛いから夢じゃない。

さっき別れたばかりだというのに、もう裕介くんに会いたくて仕方なかった。

「電話、しちゃおうかな」

おやすみだけでも言いたいなと、思い切って裕介くんのアドレスを引っ張り出して通話ボタンを押した。

「もしもし?雪乃?」

割りとすぐに通話に切り替わって、裕介くんの声が聞こえてきた。

「うん、裕介くん。
えと、こんばんは?」

「クハっ、なんで疑問形っショ?」

「だ、だって少し前まで一緒にいたから」

はずかしい。多分顔真っ赤だ。

「ところで、どうした?」

「うん、もう会いたくなっちゃって」

「....っ...」

「裕介くん?」

「あ、あぁ、なんでもない。
オレも同じこと思ってたんで驚いた」

「ほんと?うれしいな」

ふふっと笑えば、裕介くんもオレもっショと嬉しそうな声。

「なぁ、雪乃」

「ん?なぁに?」

「明日、一緒に昼飯、食わねぇ?」

「うん、もちろん!

あ!お、お弁当、お弁当作ってくね!」

「マジで?」

「うん、約束したでしょ?」

「楽しみにしてるっショ」

そう裕介くんの声が心地よくて、まだまだ話していたいのになんだか急に眠くなってしまった私は
ふぁ、と小さくあくびをこぼした。

「雪乃、眠いのか?」

「ん、ちょっと。
裕介くんの声が心地よくって」

「なんっショ、それ」

少し笑って言う裕介くんだったけど

「じゃあもう寝るか」

と電話が終わってしまいそうで

「や、やだ。もう少し、話してたい」

なんてわがままを言ってしまう。

私を気遣って寝ようって言ってくれてるのに。

「また朝電話するからヨ、今日は寝たほうがいいっショ」

そう優しい声で言ってくれる裕介くん。

「うん、わかった」

そう渋々了承すれば、多分裕介くんにバレていてクハハっと小さく笑い声がした。

「雪乃、おやすみ」

「おやすみ、裕介くん」

「好きっショ」

そう最後に囁かれて通話が切れた。

「な、なに今の....」

眠かったのに目が覚めてしまった。

「あんなの、ずるいよぉ」

そう赤くなっているであろう頬を抑えて、布団の上で私は転げ回った。







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