巻島

□あなたの声
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巻島くんとファミレスで夕飯を食べた。

この時点で夢じゃないかと思った。

だって、本当に今日はいいことが起こりすぎだったから。

送ってくれるという巻島くんと帰り道を歩く。

もうすぐ着いちゃうな、まだもう少しだけでも一緒にいたい。

そう思っていたら、寄り道を提案されて、あんまりにも嬉しくてイエスを満面の笑みで答えていたと思う。

ベンチに座るように促されて、飲み物も買ってくれる巻島くん。

優しい。

だけどなんだか悪いから、何かお礼をしたいと言えば、お弁当を作ってきてほしいって!

な、なんかそれ、彼女っぽいんじゃないかな?
って一人で慌てていたら、巻島くんがクハハって笑って、楽しみにしてるって。

え、なんだろう。

そんな反応、期待しちゃうよ?いいの?

そっと巻島くんを見れば、巻島くんもこちらを見ていて、見つめ合ってしまった。

あれ?なんか視線が反らせない。

顔がどんどん熱くなって、絶対に顔が赤いし、恥ずかしい。

でも巻島くんの目がちょっと真剣でかっこよくて

”巻島くん、好き“

そう言ってしまいそうになった時

「篠宮っちが好きだ」

そう巻島くんの声が空気を震わせた。

「..........」

すき、好き?

巻島くんが私を?

聞き違いでは.....ない。

巻島くんの声を言葉を聞き漏らすなんてそんなことしない自信があるし。
え、うそ、本当に?

「篠宮っち?」

「!」

「わるい、困らせるつもりはなかったんだけどヨ...」

とそう言って視線を逸らしてしまった巻島くん。

いけない、勘違いさせてしまっている?

「ま、巻島くん!

え、えっと違うの、びっくりしちゃっただけで」

あの、と言い淀む私に

「勘違いしちまうぜ?」

「勘違いじゃないよ、
私、巻島くんが好きっ」

言った!言ったよ私!

と妙な達成感を感じていると、何か温かいものに包まれた。

「⁉」

巻島くんに抱きしめられてる⁉

「ま、巻島くん....」

「裕介、っショ」

「ゆう、すけ..くん」

「ショ」

満足そうなショ、になんだか嬉しくなって、私もそっと裕介くんの背中に腕を回した。

すると

「雪乃」

裕介くんの声が耳元で甘く私の名前を呼ぶ。

まずい、まずいよ裕介くん。

ゾクって、ゾクってしたから。

「ゆ、すけくん......

そこで名前呼ばないで。

なんか.....」

「雪乃?」

私の反応がおかしかったからか、抱きしめていた私をそっと話して顔を覗き込んでくる裕介くん。

「.....!」

すると突然バっと顔を逸らした。

今度は私が心配になって顔を覗き込めば

「裕介くん?」

「バッ、い、今見るなっショ!」

そう言った裕介くんの顔は真っ赤で、私がキョトンとしていると

「さっきみたいな顔、他の奴にみせんなよ」

と言われた。

んと、どんな顔?と思うものの、

「裕介くんといる時と他の人といる時の顔、きっと違うから大丈夫だよ」

と笑えば

「雪乃....そういうの反則っショ...」

そう言った裕介くんはそっと私の頬に手をあてて、

あ、キスされる

そう思ったから、目をつむったら
唇に柔らかい感触。

そしてもう一度確かめるようにゆっくりとキスを落とされた。

ぼんやりとした思考で目を開ければ
熱を持った裕介くんの目。

あ、と思ったらぎゅっと抱きしめられていた。

「好きっショ」

そうまた耳元で囁かれて、

裕介くんもう私キャパオーバーだよ
恥ずかしいし嬉しいし、ドキドキが止まらないです。





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