巻島

□あなたの声
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私には好きな人がいる。

同じクラスで部活も同じ巻島裕介くんだ。

今は英語の授業で巻島くんが英文を読んでいる。

その声に耳をすます。

苦手な英語でも、巻島くんの読み上げた文はするりと頭に入ってくるから不思議だ。

「よし、巻島いいぞ」

先生の声とともに巻島くんの声が止んだ。

もう少し聞いてたかったのにな。

と少し残念に思うも、今日はラッキーだったなと、巻島くんの声の余韻にふわふわとした思考の私は、いつもよりも授業が苦ではなかった。

そんな話を昼休みに親友に話せば、彼女は

「ほんと、雪乃の趣味はちょっと理解できないなぁ」

と、何故か親友には巻島くんの良さが全然わからないらしい。

「そもそもさ、何がそんなにいいの?」

「え、かっこいいでしょ?」

「かっこいいで言うなら、金城くんの方がかっこいいでしょうよ」

「えー、そんなことないよ!
巻島くんの方がセクシーだしかっこいいもん」

目元と口元のホクロとかセクシーでしょう?

と言うも、どっちかというと怖いでしょ?と親友。

「それに巻島のセンスがわからん」

「えー?緑の髪も似合ってるし、自分を持ってるってステキだよ⁉」

「うーん、やっぱりわかんないよ、雪乃」

と親友。

「それに....優しいし、声もスキ」

「え、声?」

「うん、あの声がすごく好き」

「......まぁ、私には巻島の声の良さはわかんないけど。
でも女は耳で恋に落ちるって言うし、まぁ納得」

巻島の良さはわかんないけどね、

と最後まで巻島くんの良さが親友に伝わらなかったのはちょっと残念だけど、
私が巻島くんを好きなことは理解してもらえたようで良かった。

次の授業は古典かぁ....また巻島くんに読む順番とか当たらないかなぁ。

そんな事を考えながら、ふふふと笑えば、雪乃、あんたは....
と親友に呆れられたのだった。





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