巻島

□相合傘
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「ね、巻島くん。

自分の方に傘寄せていいんだよ?」

そう巻島の肩がだいぶ濡れているのを見て雪乃が言った。

「イヤ、女の子濡らすわけにいかないっショ」

と照れもせず言う巻島に、雪乃は頬を染めた。

傘に入っていくかと聞いた時は恥ずかしそうだったのに、巻島くんずるい。

「.....」

「篠宮?お、おい?」

「.....」

「篠宮、篠宮?

.........雪乃?」

「へっ⁉」

物思いに耽っていた雪乃はぼーっとしていたらしい。

「わ、わるい。
急に黙るから何か怒らせること言っちまったのかと...」

「ご、ごめん。違うよ?
ちょっと考え事をしちゃってた」

「ならいいんだけどヨ」

そうして落ちる沈黙。

あれ?今名前で呼ばれたような?

と雪乃がそっと巻島の顔を見上げると、わずかに耳が赤くなっている巻島がいて、雪乃もまた顔が熱くなった。


「雪乃....」

雪乃は少しビクッとしてから、

「な、なに?」

と返事をすれば

「っショ⁉」

と逆に驚く巻島

「え?」

「アー、イヤ、今のは....」

となぜかしどろもどろの巻島。

そんな巻島に首を傾げていると、急に巻島の歩みが止まって

「....雪乃って呼んでもいいっショ...?」

と空いている方の手で頬をかいてこちらを見てくる巻島に

「う、うん。...その、嬉しい」

そう答えれば

「雪乃」

と少し甘い響きの自分の名前が聞こえて雪乃はドキッとした。


「い、行くっショ」

となんでもないなかったように歩き出した巻島に雪乃は少し残念に思うのだった。






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