巻島

□相合傘
1ページ/3ページ


「ヤベっ、忘れ物しちまった...」

仕方ない、取りに戻るか..と巻島は部室の窓の外を見てため息をついた。

「降りすぎだろ、コレは」

部室から校舎まで行く間の短い距離でさえも随分と濡れてしまった巻島は、雨の激しさに嘆いた。

教室へ戻り、昇降口まで戻ってきた巻島は、そこにいた人影に目を止めた。

「ん?篠宮か?」

その声に振り返ったのは、思った通りの人物だった。

「よォ、今帰りか?」

「あ、巻島くん。
そうなの、委員会の仕事でね」

遅くなっちゃった上にこの雨だよと、苦笑いの彼女はクラスメイトの篠宮雪乃。

巻島は密かにいいなと思っていたりする。

「傘ないのか?」

「うん、そうなんだ。
いつも折りたたみ持ってるんだけど、最近雨多いでしょ?

干してもらった後に仕舞うの忘れちゃったんだよね」

そう言ってから、何かハッとした彼女はカバンを漁り始めた。

「あったあった。

はい、これ使って?」

そう言って差し出されたのは綺麗に畳まれたタオル。

巻島が疑問に思っていると

「巻島くん、濡れちゃってるよ?
また濡れるかもだけど、拭いておいた方がいいかなって」

そう言ってタオルを差し出す雪乃から、巻島はタオルを受け取った。

「わりィな」

「ううん、インハイに向けて頑張ってるのに、風邪引いたら大変だもん」

「アー..傘入ってくか?」

まぁ入っても濡れるだろうけどと、頬をかきながら視線を逸らしていう巻島に雪乃は微笑んで

「ありがとう、すごく助かる」
そう言うのだった。







.
次へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ