Others内容

□フェルディナンド×ローゼマイン
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冬の訪れ


長い婚約期間を経て、フェルディナンドと星を結んだ。

けれど特に何も変わらない生活が数日過ぎている。

寝室で同じベッドで寝るようにはなったが、フェルディナンドはただ私を抱きしめて眠るだけだ。

あれ?いいのかな、このままで。

ローゼマインは一人思案していた。

確かにフェルディナンドは言った。

「私の望みは君の家族になることで、今更君に男女間の機微など期待しておらぬ。家族同然だったこれまでと同じであればそれで良い」と。

けれど本当にいいのだろうか?

あの時に感じたフェルディナンドの想いは確実に懸想だ。

目の奥には確かに熱が燻っていたし、時たま髪に触れる時の空気は甘やかになっていたように思う。

いくら懸想という気持ちがわからないなりにも、フェルディナンドの気持ちは痛いほど感じていた。

だから、このままでいいわけはないのだ。ローゼマインは意を決して、朝の身支度の最中に側仕え達に相談をした。


「懸想とはどんな気持ちですか」

唐突に問いかければ、一瞬戸惑った表情を見せる側仕えたち。

が、慣れたものですぐに思考を戻して答えてくれるリーゼレータやクラリッサは流石だ。

「ローゼマイン様がフェルディナンド様にお感じになっているお気持ちなのではないですか?」

「私、家族としてフェルディナンドを愛してはいますけれど、それは懸想とは違うと思うのです」

ローゼマインの言葉に皆が頭を抱えた。

まだ自覚をしていなかったのか、と。

「ではお聞きしますが...もしもフェルディナンド様が第2夫人を娶られたらどう思われますか?」

とクラリッサが問いかけてきた。

「え...?」

「どんなお気持ちになられます?」

ローゼマインは思い浮かべてみた。自分に向いているフェルディナンドの気持ちが、他者へ動いた時のことを。

「...」

ローゼマインは首を振って想像を振り払った。

「本も手に付かなそう」

その返答に、側仕え達はいよいよローゼマインが気持ちを自覚したのを確信し歓喜した。

「フェルディナンドが私のそばでなく違う方のそばにいるのは..とても、嫌です」

憂の表情をするローゼマインを見て、

「それが懸想というものではありませんか?」

とクラリッサ。

「ローゼマイン様、お気持ちをお伝えしてきたらいかがですか?」

とリーゼレータ。

ローゼマインは頬を染めてその言葉にコクリと頷いたのだった。



まさか恋をしていたなんて。

前世でも恋人なんていなかった自分が、まさかと思ったが、確かに想像しただけで嫉妬したのだ。

そんなのは嫌だ、と。

フェルディナンドが自分の側から離れて違う人の元へいくのは嫌だ、と。

その想像だけで胸が締め付けられたのだから、これは立派に恋なのだろう。

家族愛だと思っていたんだけど...。

まぁ実際、イケメンであるうえに見た目は好みだ。

そばにいるのは居心地が良くて、エーレンフェストとアーレンスバッハで離れて過ごした時間は、常に会いたかったし、よくフェルディナンドのことを考えていた気がする。

自覚のない甘言をさらりと言われれば、ドキッとすることもあった。

“あれ?冷静に考えると、普通に恋してない?”

そりゃあ側仕え達も私がフェルディナンドに懸想してると思うわけだよ。

ローゼマインはため息を落とした。

加えて二人の距離感がいろんな意味で近かったのも原因なのだが、それにはまだ気づいていないローゼマインだった。


ローゼマインはフェルディナンドの執務室前に着いてノックをする。入るように促され、既に書類仕事をしているフェルディナンドの元へ近寄っていけば

「どうかしたのか?」

普段とは違うローゼマインの様子に首をかしげるフェルディナンド。

「あの、フェルディナンド....」

なんなんだと言わんばかりに不可解そうに眉を寄せ、次の言葉を待っているフェルディナンドに

「フェルディナンドが好き、です」

最後はしりすぼみになりながら告げたローゼマインの言葉に

「知っているが?」

とさらりと答えるフェルディナンド
これは家族愛の方にとられているのではなかろうか?

まさか自分でもさっき気づいた想いをフェルディナンドに知られているとは思えない。いや、わからないけど。

「家族愛ではなくて、その..えっと..フェルディナンドを、お、お慕いしています!」

言い切った!と妙な達成感を持ってフェルディナンドの顔を見れば驚いた表情をしていた。

そして、フッと微笑んだかと思うと

「私もだ、ローゼマイン」

と甘い声で返答されて、多分、顔が赤い。

フェルディナンドはいつからこんなに甘くなったのだろうか。

視線も表情もどことなく甘い。

「あぅ....」

「ローゼマイン、君にそんな顔をしてもらえるとは思ってもみなかったが、悪くないな」

かなり機嫌をよくしたフェルディナンドの甘言は止まらない。

饒舌なのは珍しい。

それだけ嬉しいということだろうか?

そう考えて、ローゼマインはまた顔に熱を持つのがわかった。

「だが、困った。仕事が手に付かぬ」

「え?」

「部屋に戻るぞ、ローゼマイン」

「まっ、え..?フェ、フェルディナンド⁉」

そっちは寝室!ローゼマインは抱きかかえられたまま運ばれていく先が寝室だと気がついて狼狽えた。

うそ、朝だよ?確かに星は結んだし、そういう知識は向こうの世界での知識があるが、気持ちが追いつかない。

ちょっとフェルディナンド⁉らしくない、らしくないのですよ!

と内心大慌てのローゼマインを寝室のベッドに横たわらせたフェルディナンドは自身もベッドへと乗り上げる。

「ローゼマイン、愛している」

「わ、私もです、フェルディナンド」

口付けがふわりと降ってきて、お互いの魔力が少し混じり合う。

なんともふわふわした心地になって、恥ずかしいのに止まらない口付けに思考は真っ白だ。

「すき」

そう口を勝手に出て紡いだ言葉にフェルディナンドは満足そうな顔をして、ローゼマイン、と愛おしそうに名前を呼んだ。

口づけだけでローゼマインは刺激が供給過多だった。

このまま冬を迎えたらどうなってしまうの?と真っ白な頭の片隅で思っていると、ふっとフェルディナンドからの口づけが止んだ。

「フェルディ、ナンド?」

予想よりも甘やかでか細い声が自分の口からこぼれ出て、恥ずかしくなった。

「今夜は覚悟しておくように」

そう言ったフェルディナンドは、少し乱れたローゼマインと自身の服をさっと整えて寝室を出て行った。

「今夜...」

フェルディナンドの言葉を思い出して顔を赤く染め上げたローゼマインは、側仕え達が声をかけに来るまで、しばらく布団の中でジタバタと悶えたのだった。


二人が冬を迎えるまであと鐘4つ





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「ブルーアンファが舞う時」の改変版
ツイッターの「ほんずき冬まつり2019」テーマが冬でツイートした作品

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