箱学
□解けない魔法
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そして、真波の背中を見つけた雪乃はそっと近寄った。
「真波くん」
声をかけると驚いたように振り返った真波の顔は涙に濡れていた。
「雪乃さん...」
いつもの笑顔はなく、困ったように呼ばれた自身の名前に、雪乃は居ても立っても居られなくなって気づけば真波をギュッと抱きしめていた。
息をのむ真波に構わずに、ギュッと抱きついたまま雪乃は真波が言葉を発するのを待った。
「俺のせいなんです」
そんな言葉で始まった真波の言葉を、雪乃は静かに耳を澄ませて、
それからしばらく自分のせいで負けたのだという真波の懺悔とも後悔ともつかない言葉をただただ聞き続けた。
「真波くん、私思うんだけど。
確かに真波くんが小野田くんをインハイに連れてきたきっかけなのかもしれないなって私も思う。
けど、レースで荒北さんも小野田くんを運んでくれたんでしょ?」
「そうですけど....」
「奇しくも、敵をアシストしたことになるんじゃない?
なら真波くんだけのせいじゃないし」
「......」
「それに、敵に塩を送るキャラクターって、結構かっこいいと思うんだけどな」
雪乃は冗談っぽく言ってから
「終わっちゃったこと、悔やんでもしょうがないよ。
来年、勝てばいいんじゃないの?
といっても、来年も勝つのはうちだけど」
「そこは俺を応援してくれるんじゃないの?」
「だって、私、総北のマネージャーだもん」
「雪乃さんがうちのマネージャーだったらよかったのに」
「残念、私はチーム総北がすきなの」
「俺のことは?」
「え?」
「俺は雪乃さん、好きなんだけどな」
そう言った真波の笑顔に雪乃はドキっとした。
「えっと、好き、だよ?」
「じゃあさ、俺と付き合って?」
そう言った真波が雪乃の表情をみてフッと笑って、それからそっとキスを落とした。
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