箱学
□解けない魔法
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-インターハイ最終日-
来る!
歓声が下から湧き上がるのを聞きながら、雪乃は坂の下を見下ろした。
並んでいる
小野田くんと真波くんが。
雪乃は総北に勝って欲しいと思いながら、真波を心の中で応援している自分に驚いた。
私....真波くんを待ってるの?
彼が走ってくるところを?
眼前に迫った二人の走りに雪乃は言葉を失った
“すごい..真波くんも小野田くんも..”
けれど視線は真波くんの走る姿に引き寄せられて
その彼の表情に魔法をかけられたように目が離せなくなった。
通り過ぎる一瞬、目があって雪乃の心臓はドキっと高鳴った。
レースは総北の勝ちだった。
嬉しいはずなのに、それよりも真波が気がかりなんて、と雪乃は苦笑して
「そっか...」
雪乃は自分の気持ちをすんなりと受け入れたのだった。
「ごめん、幹ちゃん。ちょっとお願いしてもいいかな」
テントに戻ってから、マネージャーの仕事を幹に任せ雪乃は真波を探しに再びテントの外へと出た。
箱学のテントへ行けば真波は見当たらず、雪乃は首を傾げた。
「真波くん.....」
負けて落ち込んでるとか..?
雪乃は想像もつかない真波の姿を思い浮かべながら、辺りに姿がないかと足早に探して回った。
そして−−
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