箱学
□許嫁
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「篠宮さん、オレとお付き合いしてもらえないだろうか」
今年やっと同じクラスになった篠宮雪乃さん。
オレの一目惚れだった。
彼女の所作が綺麗で見惚れたその日から、この目に篠宮さんを映さなかった日はない。
「東堂くん、ごめんなさい。
私、お付き合いできません」
「そんな顔では男は納得せんよ、
篠宮さん」
そう、そんな断るのが辛いって顔じゃあ
「えっと....」
篠宮さんは視線を彷徨わせてから、意を決したようで真っ直ぐにオレを見て言った。
「私、正直に言うと、東堂くんが好きで、お付き合いしたいです」
でも、と悲しそうな顔で微笑んで続けた
「家の決まりで....許嫁がいるの。
まだ、会ったことは無いけど、それなりにいいお家だって。
父が、そういう家に嫁がせたいって...
昔からそう言っていて」
それで恋愛も禁止されている、そう告げた篠宮さんは今にも泣きそうだ。
「それなら、オレの実家も老舗の旅館だ。
条件には当てはまらないだろうか?」
「それは...」
どうだろうと思案する篠宮さん
「オレが直接、篠宮さんのお父さんに許可をもらいに行く。
それでもダメかな?」
なんたって、篠宮さんもオレのことを好いてくれているのだ!諦めるわけにはいかん。
そう申し出れば、篠宮さんは驚いた顔をしていて、一言
「嬉しい」
そう言って綺麗な涙を流した。
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