箱学

□許嫁
1ページ/3ページ


「篠宮さん、オレとお付き合いしてもらえないだろうか」

今年やっと同じクラスになった篠宮雪乃さん。

オレの一目惚れだった。

彼女の所作が綺麗で見惚れたその日から、この目に篠宮さんを映さなかった日はない。


「東堂くん、ごめんなさい。

私、お付き合いできません」

「そんな顔では男は納得せんよ、
篠宮さん」

そう、そんな断るのが辛いって顔じゃあ

「えっと....」

篠宮さんは視線を彷徨わせてから、意を決したようで真っ直ぐにオレを見て言った。

「私、正直に言うと、東堂くんが好きで、お付き合いしたいです」

でも、と悲しそうな顔で微笑んで続けた

「家の決まりで....許嫁がいるの。

まだ、会ったことは無いけど、それなりにいいお家だって。

父が、そういう家に嫁がせたいって...
昔からそう言っていて」

それで恋愛も禁止されている、そう告げた篠宮さんは今にも泣きそうだ。

「それなら、オレの実家も老舗の旅館だ。

条件には当てはまらないだろうか?」

「それは...」

どうだろうと思案する篠宮さん

「オレが直接、篠宮さんのお父さんに許可をもらいに行く。

それでもダメかな?」

なんたって、篠宮さんもオレのことを好いてくれているのだ!諦めるわけにはいかん。

そう申し出れば、篠宮さんは驚いた顔をしていて、一言

「嬉しい」

そう言って綺麗な涙を流した。





.
次へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ