箱学

□私を見つけて
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そうして屋上に向かった二人。

お弁当を広げ、東堂が美味いと賛辞を送ったり、自転車部の話やライバルであるという“巻ちゃん”の話を東堂が話したりした

「篠宮さん、何かオレに聞きたいことがあるのではないかね?」

そんな唐突な言葉に雪乃は驚いた

「えっ⁉」

「何か気にしていることがあるのだろう?」

「なんで、わかったの?」

「篠宮さんは案外わかりやすいと思うのだが」

「聞いてくれるの?」

「オレでよければ」

「東堂君じゃないとダメなんだ」

その言葉に東堂は少し驚いた顔をした

「あのね、東堂君は人気者でしょ?
疲れたりしないのかなって...」

「それは皆に注目されるのが、という意味だろうか?」

「注目されるとか、勝手なイメージを持たれるのも....」

「オレは天に三物を与えられたからな。

注目されるのは当然だと、
それが与えられたことの対価のようなものだと思っている」

だが、と東堂は続けた。

「1人になりたいときは勿論あるぞ」

「東堂君でもそう思うの?」

「オレも人だからな。当然だろう?」

「そっか、そうだよね?

私、外見で見られることが多くて...それで...」

「篠宮さんは少し周りを気にするのを辞めて、肩の力を抜いてみるといいんじゃないかと思う」

「気にしない...って言われても...」

「そうだな、気にしないと言うよりは慣れると言うべきか」

どうだろう、オレと一緒に過ごしてみんかね?

そう言う東堂に雪乃は戸惑った。

「それってどういう...」

「うむ。オレといれば絶対的に周りが注目する。

そうして一緒に過ごせば慣れて気にならなくなるのではないかと思ったのだが」

「慣れるかな」

「周りが気にならんほど、オレのトークで楽しませよう」

自然体になった篠宮さんを見れば、きっと皆んな見方も変わるだろう。

そう東堂が笑いかければ、雪乃もふんわりと自然な笑みがこぼれたのだった。





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