箱学

□一目惚れ
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放課後、雪乃はさっそく練習を見に部室棟へ向かった。

外での走り込みが終わったのか、順々にロードが戻ってきているところだった。

そんな中、真波を呼ぶ声が聞こえて、雪乃がそちらに視線を向ければ
なにやら東堂先輩に背中をバシバシ叩かれている真波くん。

耳をすませば、どうやらタイムが戻った...

いやむしろ良くなったようだった。


「真波、よくやった。

オレの後を継ぐのだから当然だがな!」

「東堂さん、ありがとうございました」

「なに、後輩を指導するのも先輩の役目だからな!

ところで上手くいったのだろう?

篠宮さんにお礼をせねばな!」

「え?ちょっと東堂さん⁉」

そんな声が聞こえた直後、何故か東堂先輩にと真波くんがこちらにやってくる。


「篠宮さん、真波のこと、ありがとう」

「え?私....なにも...」

「いやいや、篠宮さんのお陰なのだから謙遜することはない。

これからも真波のことを頼むぞ」

そう言った東堂先輩は

「そうだ、お礼にこの山神であるオレと写真を撮ることを許可しよう!」

そう言った東堂に被せ気味で

「東堂さんと写真なんて撮らないでくださいね?雪乃さん」

と笑顔で言う真波くんからは、何故か圧力を感じて、

雪乃は東堂にお礼はいいからと、丁重にお断りしたのだった。

「真波くん?」

東堂先輩が戻ってもなお、練習に戻らない真波くん。

「ねぇ、雪乃さん。

写真、俺と撮りましょうね?」

とニッコリ笑う真波くんに

「うん、嬉しいな」

と雪乃が微笑めば

「.....雪乃さんには敵わないや」

そう言ってから、自然に頬にキスを落としていった真波くん。

「帰り、送るので待っててくださいね、雪乃さん!」

そう言って練習に戻る真波くんの背中を見つめて、雪乃は

「敵わないのは私だよ...」

と真波くんの唇の触れた頬を押さえて呟いたのだった。


きっとこれから、自由な真波くんに振り回されながらも、楽しくて甘い日々を過ごしていける。
そう雪乃は予感したのだった。





end
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